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写真4ザルツブルクのアルターマルクトの色彩。2012年撮影図1ザルツブルクの色彩。塔に一部隠れた小さな広場がアルターマルクト。1825 ?1829年頃2)こなかった。ここで興味深いのはオーストリア、ザルツブルクのアルターマルクトの色彩の変化である。現在では写真4のようにカラフルな色相ながらトーンが概ねそろっている。しかしながら、昔の絵画をみると図1 2)のようにほぼ白色であったことがわかる。現在のようなカラフルになる前には試行錯誤があったようで、今もしばらくぶりに行くと一部の色が変わっているが、トーンは一定範囲に収まっていたりするなど、全体の調和は乱されていない。つまり、今は美しいと言われている街並みであってもそれに至るには様々な試行錯誤があったのだし、未だにあるのだ。翻って日本は、少し前までは木の文化であり、色を塗る文化はヨーロッパに比べればまだ日が浅く、何十年という試行錯誤が今後必要かもしれないが、徐々に美しくなるのではと希望を持っていたい。景観法と色彩次に景観法と景観法における色彩について述べておきたい。景観法は2005年に施行された。各自治体が地域独自の景観計画を持ち、景観行政を根拠をもって行えるようにした法律である。それまでの高さや面積などで指導するハードな法律ではなく、定性的な表現などによるソフトな法律と言われた。しかしながら、ソフトな表現ではなかなか具体的な指導がしづらい。この結果、注目されたのが意匠の中の色彩であった。色彩は赤、青などと表現することもできるが、正確に色を伝えるために数値によって表すことができる。この数値によって規制する手法が重宝されたのである。景観行政団体の実に8割以上が色彩に関して数値による規制を行っていた3)。この数値自体は自治体によって若干異なるものの、その規制の方法は「彩度6以下」などという表現である。地域独自の景観を守る、または誘導することが景観法の趣旨であったにも関わらず、数値を決めてしまうことで、その範囲であれば何でもよいという錯覚に陥り、本来の「景観をよくしよう、周囲との調和を図ろう」という主旨から外れてしまわないだろうか。個人的な見解だが、数値に頼るのではなく、専門家制度、例えば景観アドバイザー、色彩アドバイザー制度を使って、個々に判断していく方法が望ましいのではと考えている次第である。次に、街並みにおける具体的な色の使い方について各論を述べていきたい。自然の色と人工物の色の違い自然の色彩は、日本の場合には樹木の緑がまず思い浮かぶ。新緑から濃い緑まで色の幅は広いが、新緑の鮮やかな緑でもせいぜい彩度6までである。また、自然の色は一様ではなく濃淡や明暗がある。自然の色に調和するようにと、人工物にも同色を塗ってしまう例がよくあるが、これはいけない。人工物に塗色をすると、どうしても全面に同じ色が続いてしまう。そうするととても自然には見えず、かえって人工的であることが目立ってしまい、不自然さを感じる。調和を目的としたにもかかわらず不自然な方が先に立ち不調和になってしまうのである。「消し色」という言い方もするが、面積や位置などに注意しないと「全く消せない」ことになるので注意したい。地域色の取り入れ方同じことが「地域色を大事にして…」というようなコン022Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018