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写真5つくば市の家電量販店。コーポレートカラーを使わず景観に配慮した例。2 0 1 5年撮影写真6金沢市の自転車道。青色ではなく桜色を施している。2010年撮影セプトにも言える。地域色を取り入れるのは良いのだが、その取り入れ方が問題なのである。農作物や花などの地域をよく表す色を見つけて、構造物、例えば橋等に取り入れる例がみられるが、その色の彩度や面積をよく考える必要がある。構造物には構造物の面積があり、地域の特産物の色そのものを塗っても、意図したように皆が見てくれるとは限らない。彩度が高い色はやはりインパクトが大きく、周囲に多大な影響を与えてしまう。その地域色の彩度が高ければ彩度を落として色相だけを活かしたり、小さな面積に使ったりするなどのデザイン上の工夫が必要になる。コーポレートカラーの使い方コーポレートカラーも重要だ。昨今、CI(コーポレートアイデンティティ)をビジュアル化したVI(ビジュアルアイデンティティ)を重視する企業が多く、特に物販や飲食関係であれば店舗にイメージカラーを施す例が多い。自治体によってその規制はまちまちなのであるが、壁面や屋上広告、屋外広告にかなり鮮やかな色を施す例をよく見かける。いわゆるロードサイドはそれらの色であふれかえっているが、これが問題なのは日本全国どこでも同じVIを施そうとするために地域色がなくなっていること、そして大面積を使い景観を阻害していることである。写真5はある企業の店舗であるが、コーポレートカラーが彩度の高い青と赤だったため、これを地域に調和した色彩に変更し、よい景観を作り出している例である。このような英断を各地で期待したいものである。自転車道の色最後に自転車道も挙げておきたい。昨今の自転車ブームなどもあって車道に自転車専用路を確保していることがあるが、そこを青色の塗装で区分けしている例が多くみられる。この青色に色彩学的な根拠はなく、他で使っていない色の例として挙げた「青」が、結果として右に倣えで使われていったとされている。我々が違和感なく調和を感じるのは、自然界の色彩配色だと言われている。長い間、目に最もなじんできたからである。この色彩はほぼ黄赤を中心としてその類似色に集中している。青は空の色以外にほぼ見られず、たまに花に見られる程度である。このほぼ自然界に見られない青が自転車道として使われ延々と目に入ってくるのだから、違和感が非常に強い。これを丹念な調査を行って異なる色にした道路が金沢にみられる。写真6に示すように桜色を用いたという。違和感がなく、しかし区分けがなされていることがお分かりになると思う。他所で使っているからと盲目的に従うのではなく、なぜこの色なのか、この色で本当によいのかと、色について考えるプロセスを皆が持つようになれば、美しい街並みが実現できるのではないだろうかと思う次第である。快適な空間へ現在、色や調和に興味がなく決められていくことがなんと多いことだろうか。しかし一つ色が変わることによって、美しい景観が作られ、快適な空間につながるのである。ぜひ公共の空間に携わる方々には色に関心を持っていただければと願う。<参考文献>1)作者不詳、絵巻『熈代勝覧』、1805年頃、ベルリン国立博物館アジア美術館蔵2)Johann Michael Sattler,“Salzburg Panorama(部分)”1825-1829頃、SalzburgMuseum蔵3)山本早里他、「地域の特色を活かした景観色彩計画に関する行政の考え方の変化」日本建築学会学術講演梗概集、環境工学I、pp.517-520、2014Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018023