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図3色覚タイプ別の呼称(CUDO推奨)一覧表表現できる優れた情報伝達要素です。しかし、情報の受け手となる人間の色覚は万人が同じ一つのタイプでは無く、多様性に富んでいます。この認識がなければ「強調するために」「すぐに見分けられるように」「目を引くために」と選んだ色合いが、ある色覚型の人や高齢者にとっては見分けにくさを生む原因になることがあるのです。「文字があることに気づかなかった」「読みにくい」「情報を正確に受け取れていない」「不便さを感じる」「安全が確保できていない」といったことは、身近に様々な場所で起きているのです。そこで、CUDOは色を用いた視覚情報ができるだけ多くの人々に速やかかつ正確に情報認識できる社会作りを目標に、カラーユニバーサルデザインの提唱普及を始めました。色覚の多様性と色弱者最先端のゲノム生物学の研究成果では、人間のもつ約3万個の遺伝子は其々に多様で、そのうちの1つを「正常」と呼ぶことはできないというのが定説になりつつあります。CUDOではこの流れに従い、従来のように色覚を「正常」と「異常」に線引きする分類をやめ、どの色覚も価値判断なく多様性として分類し、C、P、D、T、Aの5種類の型の名前で呼ぶことを提唱しています。なお、P型とD型はさらに強度と弱度に分かれます。中でも多数型のC型は「正常」でなく「一般」色覚者と呼称し、他は色認識に弱い点があることから、総称して「色弱者」と呼称しています(図3、4)。色弱者の中での多数派となるP型とD型を合算した割合は、日本では男性の5%つまり約20人に1人、女性の約500人に1人、全体では320万人以上とされています。欧米では割合が高めで男性の8~10%になります。世界中では2億人を超える人数となり、地球規模でリアルタイムコミュニケーションが一般化してきた現在、カラーユニバーサルデザインが重要かつ必要なことは言う図4各色覚ごとのシミュレーション「5色のピーマンの例」までもありません。目の疾患や加齢に伴う色の感じ方の変化人の色の感じ方は、加齢に伴う目の疾患(緑内障・白内障等)によって、視力が低下すると共に変化します。日本国内の白内障の総患者数は85万人を超え、60歳以上の罹患率は75%と言われており、高齢化社会の進行にともない、患者数はますます増える傾向にあります。また、糖尿病性網膜症や網膜色素変性症などの疾患で視力が低下する、いわゆるロービジョンと呼ばれる方も数10万人存在します。ロービジョンの人は視力の低下に加え、色の感じ方やコントラストの程度などにも配慮が必要となります。カラーユニバーサルデザインのメリットカラーユニバーサルデザインは色の感じ方が異なってもできるだけ多くの人に正しく情報が伝わることを目的にしていますので、決して色弱者のためだけのデザインではありません。伝えたい情報の目的や優先順位を考え、創り手の美意識や感性に加えて情報の受け手が感じる印象や心理を考慮し、利用者の視点に立って使いやすさを追求するデザイン手法です。特に先天性である色弱者は色の捉え方が特徴的で、一般色覚者(C型)が理解不足の場合も少なくないため、当初から色弱者と一般色覚者が共に色覚の多様性の観点から吟味し検討することが重要です。その結果として一般色覚者にとっても整理された見やすいデザインとなり、できるだけ短い時間で正しい視覚情報のコミュニケーションが可能になります。このようにカラーユニバーサルデザインは多くの人々にとって価値あるものなのです。Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018025