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Consultant279

巻頭言Consultants建設コンサルタントになりたい人、手を挙げて!!佐藤謙二一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任理事北海道支部長担い手の確保、特に新人の採用難の問題は、昨今の建設分野の大きなテーマです。建設コンサルタント業界でも新人獲得に苦戦しており、北海道支部の会員各社もその対策に頭を悩ませているところです。建設コンサルタントの仕事は社会資本整備の一連の流れの中で、主に調査・設計を担うものであり、近年は施工管理や維持補修の調査・計画なども行い、事業の全体を俯瞰できる大変やりがいのある職種です。また、社会に貢献できる喜びを感じることができるうえ、土木技術の専門性を深めることで自分自身を成長させることができる大変すばらしい職種であるにもかかわらず、建設コンサルタントを選択する学生は減少し続けています。この苦戦の要因については、少子化やインフラ投資の減少など様々な要因が考えられますが、職業の人気は時代の潮流に大きく左右され、世相の雰囲気や学生の気質・志向による部分も大きいと考えられます。一般的に理系は文系に比べて多くの苦労を強いられ、自由な時間が削られるという考えが定着しています。また理系志望者にとっては、難関でも人々に敬愛され高収入が見込める医学系、アカデミックでクリーンな理学系や薬学系、スマートで先進的な情報系等の方が、旧態依然で3Kの工事現場を連想してしまう建設関係学部・学科より魅力的なようです。さらに建設関係に興味があったとしても、土木については建築と比較して華やかさが感じられず、体力勝負の泥臭いイメージがあります。そしていざ土木を志しても、ゼネコンと比べて建設コンサルタントについては、存在が外から見えにくい、企業規模が小さい、超過勤務が多そうだ等々の情報が影響し、学生から見て魅力がある職業として積極的に選ばれ難いように思えます。「やりがい」や「使命感」といった漠然としたキーワードで語りかけても、情報豊富でドライな最近の学生たちにはウエットな言葉はなかなか通用しません。広報活動により公共事業や社会基盤整備の重要性に対する理解を促すこと、給与、労働時間など待遇改善や地位向上による魅力ある業界作りに向けた対策は大変重要ですが、文理選択から連なる諸要因を全てクリアして人気を向上させることは並大抵のことではなく、社会の価値観や教育制度にも関わる根深い問題であると思います。一方で、純粋多感な少年少女時代にイメージし体験したことは、その後どんなに別な情報が重なっても維持されるものです。格好良く目立つ仕事、おもしろい仕事、人の役に立つ仕事など、子供の頃に見聞きした記憶は蓄積されて職業選択の際の大きな要素になっています。その観点から、いくつかの機関が調査している将来なりたい職業ランキングで、スポーツ選手や医師などと並んで建築家が上位に位置していることは、イメージ次第で建設コンサルタントも魅力的な職業になりうる可能性を秘めているように思います。建設コンサルタントと建築士の仕事を比較すると、「デザイン性が重視されるか」「会社や個人の名前が表に出るか」など相違点はありますが、内容そのものに本質的な違いはなく、むしろスケールの大きさでは勝っている部分が多いと思います。そこを子供たちに知ってもらい、知的でクリエイティブで人の役に立つ仕事と感じてもらえればしめたものです。その視点から、北海道支部では防災をテーマにした補助教材や建設コンサルタントを紹介する広報冊子を制作し、それらを活用した出前講座や社会資本見学会、有名スポーツ選手を交えて職業選択を考えるトークショーの開催など、主に小中学生を対象とした地道な活動を続けています。子供たちの反応は想像以上に良好です。これらの活動は人材確保にとって即効性はありませんが、遠回りでも漢方薬のように徐々に効果が現れるものと期待しています。10年後に建設コンサルタントが、なりたい職業ランキングの常連になっていることを願って、それまでに働き方改革などの業界改革を進め、諸手を挙げて新人を歓迎できるようにしていきたいと考えています。