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写真1佐久間ダムの俯瞰全景写真2バイパス工事図1天竜川水系のダムと発電所く、ダムの建設が進められることとなったのである。水力発電所は発電量が小規模な流れ込み式のものが主流であり、当時の電力需要に応えるためには、大貯水池式の水力発電所を建設していく必要があったが、電力再編成がなされたばかりの日本では、経済的にも技術的にもリスクが大きかった。そこで、1952(昭和27)年7月31日『電源開発促進法』が施行され、これに基づき、大規模かつ困難な電源開発を使命とする電源開発株式会社が同年9月16日、国家資本による政府関係特殊会社として設立された。総裁には高碕達之助が就任した。■佐久間ダム建設地点電源開発株式会社が設立された時点で調査設計が完了していた大規模ダムの建設地点は、岐阜県庄川の御母衣たごくら福島県只見川の田子倉、静岡県天竜川の佐久間の3カ所でみぼろ、あった。しかし、佐久間以外の2カ所には複数の問題が介在していたため、早急に着工できるダムは佐久間だけであった。また、佐久間ダムの建設地点には次の特徴があった。1川幅が極端に狭く、ダム建設に適した地形で、岩盤は建築や土木用材に広く使用される花崗岩である。2ダムの下流3km付近で、コンクリートの骨材となる砂利と砂を容易に得ることができる。3国鉄(現JR)飯田線の中部天竜駅または佐久間駅が近く、交通の便が良い。4ダムの貯水効率(ダム体積あたりの有効貯水量)が205と非常に高い。つぶれち5湛水面積が大きい割には、浸水家屋や潰地が少ない。やすおか6上流に泰阜ダムと平岡ダムがあることで、砂の流れ込みが少なく、ダムがすぐに埋没することが無く、ダムの寿命が長い。7電力の需要中心地に近いため、送電ロスが少ない。しかし、「あばれ天竜」と呼ばれるだけあって融雪期、梅雨期、台風と年3回の洪水期があり、洪水量も数千m 3 /秒にも及ぶ。ダム建設はまず川の水を締め切って川底を掘り、岩盤を露出させてからダム堤体を築く手順で進められる。そのため、川を締め切っている間は川の流れを迂回させる仮排水路(バイパス)工事が必要となる。その工事期間が洪水期を避けた数カ月しか残されていなかったため、それまでの土木技術では佐久間ダムの建設には、10年間かかる見通しであった。しかし、電源開発株式会社は設立時から3年での佐久間ダム完成を命ぜられていた。■短期間でのダム建設1952年の電源開発調整審議会で佐久間ダムと佐久間発電所の着工が決定され、ダムの堤体高や発電所の出力が定められた。従来の工法では「ダム建設が不可能」と考えた高碕は渡米し、繋がりのあったアトキンソン社を訪ねた。同社は、佐久間ダムと同様の特徴を持つアメリカのパインフラットダムCivil Engineering Consultant VOL.279 April 2018043