ブックタイトルConsultant279

ページ
47/86

このページは Consultant279 の電子ブックに掲載されている47ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant279

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant279

写真5佐久間発電所への取水口写真6佐久間発電所写真7秋葉ダムる副ダムの設置とダム建設は進み、1956年8月に佐久間ダムは完成を迎え、10月には竣工式が行われた。困難に思えた3年でのダムの完成。それを可能にしたのは、アメリカからの大型重機の輸入と、それを駆使する技術者の招聘であった。重機の導入は画期的であったが、その一方で、当時の安全管理に関する意識は薄く、多くの事故を招き犠牲者は96名にのぼる。■秋葉ダムの役割佐久間ダムの下流約20kmに、同じ重力式コンクリートダムとなる秋葉ダムがある。このダムは、佐久間ダムから変則的に放流される水量を、平均して流れるように調整する役割を持っている。佐久間ダムと同時期に着工したが、工事が難航して1958(昭和33)年の完成となった。3つの発電所を有しているほか、水は三方原台地や浜松市周辺の上水道などに利用されている。■佐久間発電所佐久間発電所は、1953年12月に着工し1956年1月に完成した。4台の発電機で最大35万kWの発電が可能である。東京電力と中部電力の両方に送電するものであったため、発電機はそれぞれの管内で利用される50Hzと60Hzの周波数での発電が可能であった。3億2,600万m 3の貯水容量と133mの高落差から生み出される電力は、現在は年間14億kWhにのぼり、戦後の日本の復興を大きく後押ししただけでなく、今も私たちの暮らしを支えている。■天竜川ダム再編事業河川の整備が進んだ今でも天竜川では洪水被害が度々発生する。それを抑制するため、佐久間ダムでは下流への放流量を低減する洪水調節機能を持たせる拡張計画が進められている。一方、土砂の流入により堆砂が進行し、佐久間ダムの貯水容量は減少している。他の天竜川水系のダムも堆砂が進行していることから、山から海までの土砂移動が写真8左岸斜面から望む佐久間ダム妨げられており、天竜川河口となる遠州灘海岸では長期的な海岸浸食が進行し、18年間で約100m海岸が後退している。このため、現在進められている天竜川ダム再編事業では、佐久間ダムの機能拡張計画の他、貯水容量を確保するとともに、河川に土砂を還元するための恒久堆砂対策も進められている。戦後の土木技術の原点となり、電力不足解消にも大きく貢献した佐久間ダム。今後はダム再編事業を経て、新たな役割も担うことになる。<参考資料>1)『ダムをつくる黒四・佐久間・御母衣・丸山』大沢伸生/伊東孝1991年日本経済評論社2)『佐久間ダム―近代技術の社会的影響―』日本人文科學會1958年東京大学出版会3)『佐久間ダム・機械化施工の黎明』永田年土木学会誌1975年1月号土木学会4)『佐久間発電所及び佐久間周波数変換所の概要と構造』中村悦幸建設の施工企画2012年4月(746)号日本建設機械施工協会5)『佐久間ダム』土田茂コンクリート工学vol.40,No.1(2002年1月号)日本コンクリート工学会6)『建設機械化の歴史』川本正之建設の施工企画2007年1月(683)号日本建設機械施工協会7)『天竜川水系のダムと発電所』電源開発株式会社中部支店2016年8)『天竜川ダム再編事業』国土交通省中部地方整備局浜松河川国道事務所2016年<取材協力・資料提供>1)J-POWER(電源開発株式会社)2)株式会社JPハイテック<写真提供>P42上、写真4、6熊井彩乃図1参考資料7より写真1、2、3 J-POWER(電源開発株式会社)写真5箕輪知佳写真7佐々木勝写真8塚本敏行Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018045