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Consultant279

発に代表される欧米の港湾再開発に触発されて、大都市港湾の湾奥部を中心に老朽化・陳腐化した港湾施設とその一帯を再開発し、「にぎわい空間」を創出しようという機運が急激に盛り上がり、1980年代半ばには全国各地で多くのプロジェクトが事業化された。しかしながら、当時の港湾再開発の多くは、上述したように遊休化、低未利用化した土地を活用した開発、あるいは大規模な埋立てを伴う開発であり、商業・業務等の都市的な機能を集積させる、いわば背後都市が抱える諸問題解決の受け皿として港湾の土地を使った都市開発ともいえ、水面が持つ癒しの機能や行き交う船を間近に見ることができる「みなと」ならではの景観といった魅力を十分に生かし切れていないケースが少なからずあったことも否めない。表1は、ヨーロッパでもっとも大きな港湾再開発の一つと言われている、独ハンブルク港のハーフェンシティー地区開発計画と我が国を代表する港湾再開発の横浜港みなとみらい21(MM21)地区開発計画を比較したものだ。MM21計画では約74haという広大な埋立てが行われているのに比べ、ハーフェンシティー地区ではほとんど埋立てがなく、極力水面を残す計画になっている。既存の水路の両側には往時を偲ばせるレンガ造りの倉庫が立ち並び、また、他の水路は浮桟橋形式で人の動線を確保するとともに、遊覧船やフェリーが行き交う様子を間近に見ることができるように工夫されている。また、水路に面して新しく造られた建物の中には通路を行きかう人の動線を遮らないように、水際線に向かってオーバーハングするような構造のものが数多く見られる(写真2)。現在、我が国では人口急減少、超高齢化社会の到来に備えて、いわば地域の生き残りをかけた取り組みが全国各地で進められている。政府が掲げる「地方創生」においても、今後いかに交流人口を増やし、地域の活力を維持していくかが地域の将来像を描くうえで欠くことができないテーマの一つとして問われている。折しも、「大観光時代の到来」と言われるように、ここ写真1オンフルール港写真2ハンブルク港ハーフェンシティー地区表1ハーフェンシティー地区MM21地区開発期間2008?2025年1983 ? 2011年(インフラ整備)計画目標ハンブルク港ハーフェンシティー地区と横浜港MM21地区の比較21世紀に相応しい都心を目指す【持続可能な都心】【文化に満ちた都心】コンセプト【楽しい都心生活】【パブリックスペースの充実】【インフラ整備】横浜の自立性の強化、業務機能の集積、港湾機能の質転換【24時間活動する国際文化都市】【21世紀の情報都市】【水と緑と歴史に囲まれた人間環境都市】開発面積157ha 186ha(東京ドーム約40個分)埋立面積ほとんどなし73.9ha総投資額約1兆円約2.6兆円数年の外国人観光客(インバウンド)の増加には目を見張るものがあるが、この要因の一つに大型クルーズ客船で我が国を訪れる外国人観光客の増加が挙げられる。クルーズ船の寄港が地域にもたらす効果については、グルメ、ショッピングなど地場産品の消費による経済効果に加え、外国人観光客との交流による国際交流あるいは国際教育等の効果などについても期待が寄せられている。それぞれの地域においては、地方創生の観点も踏まえてクルーズ客のニーズに応えるための新たな観光資源の発掘や、市民団体が中心となって「みなとまち」の賑わいづくりに向けた取り組みも全国各地で盛んだ。「みなと」そして「ウォーターフロント」というかけがえのない資源を持つ地域や都市にとって、それぞれの「みなと」が持つ歴史や文化を背景とした、その「みなと」にしかない「宝物」に磨きをかけ、常にそこに人の存在が感じられる個性豊かな「みなとまち」に仕上げる仕掛けを、行政、民間そして市民団体等が協働して作り上げていくことが求められている。JCCAの会員各社においても新たな「みなとまち」の計画づくりをはじめ様々な活動を通じて全国のWFの活性化に寄与していただくことを期待したい。Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018003