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2/3のところには2か所の多目的駅が設けられています。これらの駅は換気設備とその他の機械類を備える他、列車がトンネル間を移るための渡り線が設けられています。通常の旅客の扱いは行いませんが、非常時には隣の線路に移り、脱出することができます。建設の背景・経緯ビアシナ渓谷を横断しゴッタルド峠を通過する道路やそのトンネルは、アルプス山脈を横断してヨーロッパの南北軸を形成する最重要交通路です。交通量は1980年以来10倍以上に増加しており、道路トンネル、鉄道トンネル共に容量は限界に達していました。アルプス地域保護のため、貨物輸送を極力道路から鉄道にシフトすることがスイス国の方針となっており、これに沿ってスイスは大重量貨物車両の通過制限を求めEUとの協議の場を持ちましたが、承認を得ることはできませんでした。そのため、アルプス保護法※1を制定し、この保護法の目的を達成するためには、ゴッタルドベーストンネル建設を柱とするアルプトランジット計画の達成が不可欠であります。この計画は1999年の国民投票により整備・財政計画が承認され、総工費は124億スイスフラン(約1兆4800億円)その財源は先の重量貨物通行税(64%)、ガソリン税(13%)、消費税等(23%)となっています。そこでこの問題を解決するのが「シュツットガルト21計画」です。中央駅の地下化、新線をアウトバーンに並行させることで環境および住民への配慮をし、あわせて空港直結駅の構築、既存地上駅の都市開発を行うものです。コストおよび資金調達、整備による効果コストとしては、現在約65億ユーロ(約8,500億円)が想定されています。資金調達としては、ドイツ鉄道(DB)が57.4%、EU・連邦政府が18.8%、州政府が14.3%を負担し、その他を市政府、空港、周辺地域が負担することとなっていますが、当初計画の約2倍のコストになるという問題も発生しています。整備の効果として、移動時間の短縮が可能となります。・シュツットガルトからウルムへの移動時間:54分→28分・シュツットガルト中央駅から空港までの移動時間:27分→8分また、地上駅の地下化により、S-Bahn鉄道駅との乗り換え距離の短縮も図られました。現況工事の現況としては、既存の頭端駅のホームの位置を移動し、地下駅となる部分を掘削しています。試運転開始時期は現段階では2021年12月を予定しています。■ドイツ・シュツットガルト21計画概要シュツットガルトはドイツ南西部に位置し、人口約60万人(近隣周辺都市を合わせると100万人超)、ドイツ国内屈指の工業都市です。1980年代、地域の中心都市であるシュツットガルトは、連邦交通計画の高速鉄道網の経由地から外されておりました。その理由は、シュツットガルトの中心市街が丘陵に囲まれた盆地になっているため、鉄道は市の外縁部から山の斜面を巻くように中心へ下って入る形状になり、その線形は高速走行に向いていないからです。さらにシュツットガルト中央駅が折り返しの必要な頭端駅であるため、シュツットガルトを経由すると、都市間鉄道の高速性は大きく損なわれ写真2シュツットガルト2 1計画の現況ます。■おわりに今回の視察を通じ、欧州各国では厳しい財政状況の中で民間資金を用いた各種手法を使いながらも、将来に向けたインフラ整備を進めていることが分かりました。また、大規模公共事業を行うために国民投票を行う国が多く、今回紹介した「シュツットガルト21計画」では工事着手後に州民投票で工事継続の是非が問われ、その結果、継続されることとなりました。このように国民がインフラ整備に対する強い関心を持ち、整備による効果を理解していることを感じました。また、今後も欧米先進諸国のインフラ整備状況を発信し、日本においても次世代へ安全・安心で、経済活動を高めることのできるインフラ施設を残していかなくてはならないと感じました。次号では、我々が提言した国内のプロジェクトの一部を地域ごとに紹介いたします。※1アルプス保護法自国内を通過する3.5t以上の自国及び外国のトラックに対し、走行距離に応じた課税を行い、1994年にはアルプス地区における道路の新設を中止し、極力多数の貨物輸送を道路から鉄道にシフトするもの。Civil Engineering Consultant VOL.279 April 2018051