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Civil Engineering Consultant VOL.284 July 2019 011加者一同でいただく「直なお会らい」があります。直会は「神人共食」、つまり神と人とが共に食べる場でした。神道では神様に供えた食べ物には特別な力が宿ると考えます。そのため、直会で神様の力が宿った食べ物をいただくことで、神様のご加護をいただくことができ、神様と人との結びつきが強まると考えたのです。この「神饌」と「直会」こそ、各地に残る「まじない食」の源流のひとつであったのでしょう。「直会」と聞くと、一般的にはあまりなじみのない特殊な儀式だと思う方が多いかもしれません。しかし実は私たちの暮らしの中にも神饌と直会が根付いています。たとえば正月のおせちや鏡餅もそのひとつです。本来、正月とは各家庭に年神様を迎えるために行う「正月祭」であり、鏡餅は年神様にお供えする神饌でした。また雑煮は、年神様の力が宿った餅を家族皆でいただく直会の形です。このように私たちは日常生活の中で知らず知らずのうちに神饌や直会を経験しているのです。さらに日本全国に目を向けると、土地独特のユニークな神饌や直会が受け継がれています。宗像の「古式祭」 ?神様と人との宴?各地に残る直会のなかでも、特に規模が大きいものとして福岡・宗むな像かた大たい社しゃで行われる古式祭の「御お座ざ」があります。「御座」は神様と人が共に食事をいただき、一年の喜びを分かち合うための場であり、宗像大社の辺へ津つ宮みやで毎年12月15日に近い日曜日の早朝に行われます。この日、神様に供えられるのは「ゲバサ藻、九年母(ミカンの原種)、菱餅」を使った「御菓子」と呼ばれる特殊な神饌です。古式祭は古くは田島地区の収穫感謝祭として行われてきました。人々は海・山・畑でとれたものそれぞれを神饌として供え感謝を捧げました。「御菓子」の中心に据えられるのは、近くの海岸でとれたホンダワラ属の「ゲバサ藻」という海藻です。神様への神饌には生のまま、御座で人々がいただく料理にはゆでて味噌和えにしたものが使われます。御座の料理には神饌に供えたゲバサ藻・九年母・菱餅が使われ、参加者は延命招福を願いながら味わいます。御膳には神様が宿る依よ り代しろの意味を持つ御ご 幣へいが添えられ、この場がまさに神様と人との宴であることを感じることができます。奥能登の「あえのこと」?飢饉に苦しんだ農家の祈り?石川県能登半島の農家で受け継がれてきた「あえのこと」は、田の神様を家に迎えご馳走でもてなす農耕神事です。「奥能登のあえのこと」の名で国の重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。田の神様は田んぼの守り神。稲作が行われている間は田で稲を守っていらっしゃるので、稲刈りが終わったら各家にお招きし一冬を家の中でゆっくり過ごしてもらい、春が近づくと再び田へお送りします。そ写真3 古式祭「御座」の様子写真4 古式祭の「御座」の料理写真5  家の主が料理の説明をしながら田の神様へ感謝を伝える