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012 Civil Engineering Consultant VOL.284 July 2019のため「あえのこと」は迎えと送りの年二回行われます。12月5日に行われる「迎えのあえのこと」では、まず家の主が田んぼまで田の神様を迎えに行き、鍬に神様を宿し、家までお連れします。もちろん我々の目には田の神様は見えませんが、家の主はあたかもそこに神様がいらっしゃるようにふるまい、言葉をかけます。田の神様は夫婦神で、稲の葉先で目を怪我したために片目が不自由と伝わります。そのため主は「ここに段差がございます、足元お気を付けください」などと声をかけながら、家の中へ案内します。家についたら、囲炉裏で暖をとっていただき、その後にわかしておいた風呂へ案内し入浴をすすめます。お風呂でゆっくりあたたまってもらったら、たくさんのご馳走が並ぶ床の間へお通しします。主は田の神様にむけて「今年の夏は干ばつが心配されましたが、平年並みの収穫がありました。これも田の神様のおかげです。ありがとうございました。今年も御膳を用意しました。どうぞお召し上がりください」と感謝を伝えます。御膳には栗の木で作られた大きな箸とともに、山盛りご飯、納豆汁、煮しめ、ブリの刺身、なます、尾頭付きのハチメ(メバル)といったご馳走が並びます。料理にもさまざまな願い事が込められています。納豆汁は「粘り強く働く」。ハチメは口が大きいことから「収穫が増えるように」。箸に栗の木を使うのは「実がなる」が転じて「豊作になるように」。一本大根と二股大根は「子孫繁栄」。縁起物尽くしのおめでたいご馳走です。また「虫」を連想させる蒸した料理や、「田が焼ける」を連想する焼いた料理は神様へのお供えには用いません。奥能登は昔から干ばつが多く、大規模な飢饉が起こるたびに多くの人々が命を落とした歴史があります。嵐や干ばつといった自然は、人間の力ではどうすることもできません。だからこそ農家の方々は、無事に収穫できたことを心から感謝し、来年もまた何事もなく豊作であるようにと祈ったのでしょう。神様の食事が終わると直会がはじまります。神様に供えたものとほぼ同じ料理を囲み、家族皆でお腹いっぱいになるまでご馳走をいただく直会は、正月よりも楽しみだったと地元の方は語ります。人々の生活を支えた素朴な祈りと食風景が、奥能登には今も受け継がれています。金浦山神社の「掛魚まつり」 ?海での無事を祈る?秋田県にかほ市の金この浦うら山やま神社で毎年2月4日に行われる「掛かけ魚よ まつり」は、約350 年の歴史を持つ祭りです。「漁師の年とり」の日でもある立春の日、神社にタラを奉納します。タラの重さは約15~16kg。漁師たちは二人がかりで竹竿を担ぎ、タラをぶら下げて漁港から金浦山神社まで行列します。奉納されるタラはメスのみで、この時期は腹にたっぷりのたらこを蓄えています。はちきれんばかりに膨らんだタラが、神前にずらりと奉納される様子は実に壮観です。掛魚まつりは、かつて冬の荒れた海で金浦の漁師の8割が亡くなる船の大事故が起きたことから、海上安全と大漁祈願、家内安全を祈るために始まりました。今でも金浦の漁師にとって「掛魚まつりが終わってからやっと新しい年が始まる」というほどに大切な行事だといいます。写真7 「あえのこと写真6 「 あえのこと」のご馳走。夫婦二神のため」の直会膳(※注:直会の箸は栗の箸ではない)に二対の御膳を用意する