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Civil Engineering Consultant VOL.284 July 2019 029が祭りのために集まり、男女で舞う演目となった。長野県の遠山郷には『霜月祭り』という、湯を立てた竈かまどのまわりで地元の神々が暴れる祭りがある。戦前に竈は13カ所あったが、2018年は9カ所だった。高齢化による過疎が進み、限界集落となった地区が多い。1世帯10万円近い祭りへの出費は高齢者が多い限界集落では大変厳しく、25戸を割ってしまうと祭りの維持が難しくなると言われている。また夜を徹しての神楽の舞い手の年齢的限界もある。その集落のうち、いくつかの地区は活気づいている。聞くと「野郎会」という組織ができているという。集落を離れた出身者たちがつながり、ふる里の祭りの存続のために祭りの日に戻ってくる若者たちだ。この野郎会の結成により、祭りが蘇った地区ができた。2018 年、限界集落の八日市場で『霜月祭り』が行われ、テレビ番組でも特集が組まれた。この特集により、村人が祭りをつなぐきっかけとなって欲しいと望んだが、八日市場はこの特集を良き記念とし、最後の祭りとした。『高浜八幡神社秋季大祭』長崎市高浜地区には、江戸時代に活躍した力士が地元の出身であることから、秋祭りで奉納相撲が継承されている。最初に行われるのは小学生による神事、そして奉納相撲33 番。少子化に悩む地域のため、同じ子供が何回も登場していたがそれも限界だという。最近、女児が相撲に興味を持ち、小学校などで稽古を始めた。神事が終わったあとの相撲大会には高校生の女子も参加する。役員会では、相撲33 番を続けるために女子を登場させるかの議論が白熱した。最後に会長一任となり、2018 年の結論は「今年は男子のみ28番の奉納相撲を33番として行う」だった。変わりゆく祭り東日本大震災の後、ふる里の意識が人々の間に高まり、祭りはふる里と人をつなぐ絆となった。多くの人々がふる里の祭りのために帰省し、中止していた祭りを再開した地域も多い。一方、災害、少子化、高齢化などさまざまな問題の中で変わりゆく祭りも多い。伝統と変容との間で、継承されているどの祭りにも、次世代へ祭りをつなぐという強い意志をもったキーパーソンとなる人々がいる。彼らの役割こそが、祭りのゆくえに重要な方向性を持っている。写真6 『霜月祭り』。土地の神が煮えたった竈の湯を手で切る(2008 年)写真7 『高浜八幡神社秋季大祭』。赤ちゃんの土俵入り(2018 年)