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Civil Engineering Consultant VOL.284 July 2019 031柱状節理の形成プロセスこの柱のような規則的な幾何学模様は柱状節理と呼ばれ、玄武岩にできた割れ目である。ではこの柱状節理は、いったいどのようにして形成されたのであろうか。約300万年前の新生代新第三紀鮮新世という地質時代に、地下深部から上昇してきた液体のマグマが、やがて地表に噴出し、冷えて固体である玄武岩溶岩となった。周辺に分布する岩石は「東松浦玄武岩」と呼ばれ、当時の噴火様式は富士山のような円錐形の火山に見られる中心噴火ではなく、割れ目噴火で広域に噴出して、溶岩台地を形成したと考えられている。高温の溶岩が冷えて固まってゆくときに、その過程で岩石は体積が収縮するために、冷却節理と呼ばれる割れ目が形成される。この時割れ目は、台地状に広がる溶岩層の上下の冷却面、すなわち空気と接する溶岩の表面と、溶岩がもともとの地面と接触する底面、これら両者に垂直な方向に発達することになる。よって地面から直立した割れ目が多くなる。これが柱状節理だ。柱の断面は六角形が多いが、五角形や四角形もある。干上がった田んぼの表面の泥に見られる乾燥割れ目も、これと同じ理由で生じたものだ。柱状節理は岩盤にできた割れ目であるため、これに沿ってはがれやすい。日本海の荒波にずっともまれているうちに海水による浸食が進行してゆき、七つの海食洞が形成されたのだ。海岸の風景から地球を学ぶこうした特徴的な地形と景勝地としての要素が評価され、七ツ釜は国の天然記念物に指定されている。岬の付け根付近と呼よぶ子こ 港から観光遊覧船が運航されており、数十分の周遊を体験出来る。大きな海食洞は、間口・高さとも3m、奥行き110mにもおよび、この遊覧船で洞内に入ることが可能である。そこで間近に接する柱状節理は、人間の営みとは独立に進行してきたその成り立ちの過程を我々に教えてくれる。海の青さと白い波、そして黒い玄武岩の柱状節理と洞門。自然の造形美を堪能するとともに、地球の息吹とその悠久の歴史に思いをはせることが出来る空間が、ここにはある。<写真提供>① 一般社団法人 佐賀県観光連盟② 茂木道夫② 玄武岩に発達する柱状節理とその断面