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Civil Engineering Consultant VOL.284 July 2019 039ピュータ制御による流量調整機能をもつ取水堰への改修などが行われた。時代の変化とともに道路や住宅地の建設が進む安曇野が抱えた新たな課題は洪水被害地域の拡大だった。灌漑を目的とした用水路は排水機能を持たなかったのである。その対策として1995(平成7)年から2006(平成18)年にかけ、拾ケ堰を中心に基幹用水路に排水機能をもたせる工事が実施された。既設の用水路を深くし、中央にコンクリート壁を設けることで、常時水を供給する用水機能と降雨時に増水した時の受け皿としての排水機能を兼ね備えたものにしたのである。また、排水能力の向上や護岸の強度確保だけでなく水生植物や魚類の生息環境にも配慮したものとなっている。■ 水と共に暮らす安曇野扇状地は河川によって築かれ、用水路によって開拓された。青々とした水田とこんこんと水路を流れる水とがどこまでも広がるこの地が、不毛の地であったと誰が想像できるだろうか。地元の人々は拾ケ堰を「じっか」と呼ぶ。その慣れ親しんだ呼び方から、この地域の人々の生活と拾ケ堰が密接に関わっていることが伺える。夏は水遊びや魚とり、冬はスケートや土手マラソン、そんな時代もあったという。この美しい一面に広がる田園風景を管理し維持し続けるには人の力が必要不可欠である。水と共に暮らし、この景色を守っていこうとするという人々の姿もまた、この日本の原風景の一部なのだろう。<参考文献>1)『安曇野水土記』農林水産省関東農政局安曇野農業水利事業所 2000年2)『拾ケ堰開削200年の歩み 先人たちの想いを未来へ』長野県拾ケ堰土地改良区3)『親子で学ぶ 安曇野の拾ケ堰 ガイドブック』長野県拾ケ堰土地改良区/拾ケ堰応援隊 2011年4)『豊科町誌(歴史編・民俗編・水利編)』豊科町誌編纂委員会 1995 年 豊科町誌刊行会5)『穂高町誌(歴史編上・民俗編)』穂高町誌編纂委員会 1991年 穂高町誌刊行会6)『豊かな水土里を次世代に?土地改良・人・技術(13)環境配慮と住民参画、「地域」に密着した安曇野農業水利事業』大塚義人 土地改良:大地に刻む農の文化49(1)(通号 272) 2011年 東京:土地改良建設協会<取材協力・資料提供>1) 長野県拾ケ堰土地改良区<図・写真提供>図1 株式会社大應作製図2、3、4、5  一般社団法人 農業農村整備情報総合センターホームページ『水土の礎』より加工して作製P36上 田中知実  写真1 長野県拾ケ堰土地改良区写真2、3 塚本敏行  写真4 山上英之写真1 大正時代のサイフォン工事写真3 奈良井川頭首工写真2 中壁で仕切られた排水機能がある区間写真4 田園地帯