ブックタイトルConsultant285

ページ
23/56

このページは Consultant285 の電子ブックに掲載されている23ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant285

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant285

Civil Engineering Consultant VOL.285 October 2019 021でも使われつづけていることが、そのスゴさを語っています。広告は、読者にも挑戦する。「想像力と数百円」これは、どんな商品のために書かれたコピーか、想像がつきますでしょうか。広告主は、新潮文庫(1984 年)。コピーライターは、あの糸井重里さんです。しかもこれは広告の真ん中にキャッチフレーズとして「見て!見て!」と入っているものではなく、新潮文庫という商品名の上に小さく置かれたショルダーコピーやタグラインと呼ばれる類のコピーでした。このコピーにおける“挑戦”とは、広告の受け手に対して「想像力と数百円あれば、誰でも新潮文庫をお楽しみいただけます。」と、やさしい顔で言っているフリをしながら、実は「想像力のない人には、数百円あっても新潮文庫をお楽しみいただくことはできません。」と、挑戦しているところにあります。文章を読み解く「読解力」ではなく「想像力」こそが、いわば読者に求められる資質なのですよと、このコピーは挑戦しているように思えるのです。そして、その意図を汲みとることができた読者は「うん、自分の想像力と数百円を駆使して新潮文庫を楽しめる私って、いいかも。」と、新潮文庫を買って読書に耽ったのです。スミマセン、あくまでも私個人の考えなので、お許しください。そして、やはりこのコピーも「同業他社でも同じことが言えるじゃないか。」ではなく、「そういうことを言える会社って、素敵。」なのですね。挑戦しようと背中を押す広告。「恋は、遠い日の花火ではない。」テレビCMの中で長塚京三さんが演じる課長の姿に、自分を重ねたオジサンも多かったのではないでしょうか。これは、ウイスキーのために書かれたコピー。広告主は、サントリー(1995年)。コピーライターは、小野田隆雄さんです。オールドという名前のウイスキーが新しくなる時に、世の中の大人たちに向かってセンチメンタルに問いかける。それは、時間に流されて大切なものを失っていく大人たちに向けて、「あなたはどうする?」とか「まだまだできるんじゃないか。」という気持ちを込めて、そっと背中を押して挑戦を促すコピーだったと思うのです。「諦めないで挑戦しよう!」と大きな声で叫ばれるより、「恋は、遠い日の花火ではない。」と、やわらかに囁かれる方が、人は自分から動きたくなります。けっして浮気のススメではなく(笑)、いろいろなものにきちんと愛情と情熱を注いで自分らしい挑戦を続けて、何かを諦める大人にはならないでほしいというメッセージを受けとめることができたからこそ、このコピーも広く深く共感されたのではないでしょうか。広告は、古い慣習にも挑戦する。「好きだから、あげる。」さて、このコピーは、どんな企業のために書かれたものでしょうか。広告主は、丸井(1981年)。コピーライターは、仲畑貴志さんです。このあたたかくてチャーミングな言葉のどこに“挑戦”を感じるかというと、それは競業他社に対する挑戦、あるいはそれまでの古い慣習に対しての挑戦だったと思うのです。当時、いわゆる百貨店で買われる贈り物は「義理だから、あげる。」もので、お中元やお歳暮に代表されるような、さまざまなお付き合いの中でのしきたりに従って買われていたものでした。もちろん、そこに「好き」という感情が無いわけではありませんし、現在でもそういう買い物は続いています。けれど、コピーライターは挑戦図2  現在は使われていないのが不思議なほど、スゴいコピーだと思います。図3  単なる正論だけでは、人の心は動かないことを教えてくれるコピーです。