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Consultant285

022 Civil Engineering Consultant VOL.285 October 2019する相手をしっかりと設定することで、「いや、贈り物って、もっと自由なものでしょ。自分が本当に大切だと思う人に、本当に好きな人に、好きだからという理由で贈ればいいんだよ。」と、プレゼントの本質をシンプルなコピーでズバッと提示したのです。そこには、挑戦することから始まる価値の転換が生まれました。これまでの百貨店での贈り物は、古い大人たちのもの。これからの新しい若者たちは丸井で、もっと自由にプレゼントを選ぼうよと。誰も反対できない(ネガティブなイメージのない)提案は、強いのですね。東北の、あるプロジェクトの挑戦。ここまでは、名作と言われているコピーを通しての“挑戦”について書かせてもらってきましたが、ここからは、私が関わらせていただいた、あるプロジェクトの話を紹介させてください。それは、宮城県石巻市雄おがつちょう勝町にある子どもたちのための複合体験施設「MORIUMIUS:モリウミアス」。2011年3月11日に起きた東日本大震災をきっかけに、私は自分の仕事を通して東北の応援を続けています。大津波の直撃で町の8割が壊滅してしまった雄勝町ですが、それでもこの地域を復興させようと立ち上がった人たちがいました。高台に残っていた築93年の廃校(旧 桑浜小学校)の建物を再生し、「全国から、世界中から、子どもたちが集まる学びと交流の場にしたい。」「子どもたちの好奇心と探求心を刺激して、未来に向かってたくましく生きる力が湧いてくるような場にしたい。」と、震災をきっかけにこの町を応援する人たちと、震災を乗り越えながら地元に暮らす人たちと一緒に取り組んだプロジェクトそのものが、まさしく大きな挑戦だったのです。そこで、私はこの施設のネーミングを担当しました。三陸という土地は海の魅力に注目が集まりがちですが、その海の豊かさを作っているのは森の豊かさです。雄勝町のポテンシャルと言える「森と海」をキーワードにネーミングを作りたいという考えは当初からありました。けれど、それだけではこの施設が目指す場を表現する名前にはなりません。私が考えたのは、そこに「明日」というキーワードを加えることでした。子どもたちの明日を育てること。震災の先で、雄勝町と東北の明日を築くこと。それは、きっと日本と世界の明日を広げることにつながっていくはずだという壮大な思いまで込めたかったのです。「明日」というキーワードには、もともと前向きな挑戦のニュアンスも含まれています。そこから「森と、海と、明日へ。モリウミアス」というコピーとネーミングが生まれました。そして仲間たちと話し合う中から、英語では「MORIUMIUS」と表記することで「US=私たちを」のニュアンスも含めることができ、地元に暮らす人たちとこの町を応援する人たち、みんなが一緒に明日へと向かう気持ちまで込められるネーミングになったのです。さらに、雄勝町の夜空には満天の星が輝きます。「MORIUMIUS:モリウミアス」には星座の名前のような美しい響きがあるでしょとアピールするのは、手前味噌が過ぎるでしょうか(苦笑)。ついでに書かせていただくなら、モリは「守り」でもあり、大切なものを守りつづけること。ウミは「生み」でもあり、新しい何かを生み出していくこと。そんな挑戦の姿勢も込めているのでした。この「MORIUMIUS:モリウミアス」は、2016 年度のグッドデザイン賞を受賞しています。図4  みんなが(無意識に)思っていたことに気づかせてくれた、素敵なコピー。図5  ロゴマークは、森と海と地球と笑顔、MとUとUをモチーフにしています。