ブックタイトルConsultant285
- ページ
- 33/56
このページは Consultant285 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは Consultant285 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
Consultant285
Civil Engineering Consultant VOL.285 October 2019 031した専門技術者の配置が重要となっていることが分かる。地域固有の課題特性は以下の3点である。1点目は、一般的なコンサルタント派遣による地域支援や一回限りの行政出前講座では解決できない、大規模土地利用転換が継続的に発生するという、非常に複雑かつ難解な課題特性を抱える地域であったこと。2点目は、このような課題に対応できるまちづくり支援制度が整備されていなかったため、地域主体で取り組まざるを得なかったこと。3点目は、行政(各施設管理担当部局)と地域間、地域と地域間、民間開発事業者と地域間の調整役を継続的に支援できる専門技術者を地域が必要としていたことである。つまり、「やりやすい地域」を選んでプロボノ活動に取り組んだのではなく、「非常に難解な課題を抱える地域」で支援活動を継続し多くの成果を出せたことで、結果的に対外的にも評価されたのである。本来のプロボノ活動のあり方我々建設コンサルタントによるプロボノ活動は、ボランティア活動とは区別しなければならないが、ボランティア活動を否定するものでもない。前述の通りプロボノ活動は、業務の範疇では諸条件により実施・実現することができない「もっと良いもの」を実践する機会・場である。また、無償の支援であっても、プロボノ活動で実現するものは、先ずは「自己研鑽」である。その結果として「地域にとって公共公益性の高い成果(社会貢献)」が『確実に付帯』するだけである。加賀のまちづくりを紹介する講演や研修(写真3)において、必ず質問されるのが「まちづくり会社等に法人化したほうがいいのでは?」という意見である。私にとってはプロボノ活動である以上、自己研鑽に制約(支援目的・業務内容の制約)が生じる事業化はすべきではないと判断しており、得られた技術力を本職(勤務先の業務や自主研究)に発揮できることが、最高の便益であると考えている。プロボノ活動を推進する環境づくりいわゆるボランティア休暇のような一時的なCSR(企業の社会的責任)活動支援の制度はあっても、プロボノ活動の動機や目的、取り組み分野・内容の設定レベルが、既往制度の枠を超えたものであるがために、継続的なプロボノ活動実施に向けた企業側の支援体制や、行政による推進制度は未だ不十分な状況にある。しかし、近年の若い技術者の中にも勤務時間内に高い生産性を発揮できる技術を磨くために、OFF-JTの必要性を十分実感しているケースがみられる。さらに、シニア技術者においても「せめて寿命のマイナス10 歳まで」の90歳まで働き続けられるように、既往技術のバージョンアップや新規技術開発を目指す人は、きっと少なからずいるはずである。表1に列記した加賀のまちづくりに関する受賞実績の他に、個人として、平成29 年には勤務先の建設技術研究所より「石井賞」、令和元年には母校早稲田大学の稲門建築会より「特別功労賞」をいただき、私自身の励みとなっている(写真4)。全ての技術者自身が、自己研鑽したい技術分野の実践的なフィールドを見つけ出し、地域ニーズや地元との相性もうまくいくといった条件が整うかというと、必ずしもそうではない。その機会・場や環境を確保するための支援制度、地域ニーズや人材に係る情報共有等を各企業、事業者団体、行政が協力・連携して整備していくこと、さらに、これらの活動を奨励・周知・普及していくことは、我々のようなプロボノ活動を望む多くの技術者にとって、重要なことといえる。写真3 景観行政講習会における講演写真4 稲門建築会・特別功労賞