ブックタイトルConsultant285

ページ
34/56

このページは Consultant285 の電子ブックに掲載されている34ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant285

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant285

032 Civil Engineering Consultant VOL.285 October 2019出羽三山の信仰とともに山岳信仰や修験道の地としても知られる出羽三山。修験者は山伏ともいわれ、山野の恵みに対する広範な知識や技術を持っていた。山伏は、山の中で生きるため、山菜やキノコを保存食にするほか、その成分や効用に着目し、薬や染料としても活用する。当地の精進料理は山で生きるための術と、仏教とともに伝来した調理法とが融合して誕生したものと考えられている。出羽三山登拝は江戸時代以降、大いににぎわいを見せるようになった。参拝客は必ず宿坊に泊まり、そこから山伏の先達によるガイドで羽黒山-月山-湯殿山と三山を巡ったという。そこで供された精進料理には、参拝者の心身を清める食事としての他、料理の名前(別名)に山伏の間だけで使われる隠語を付けられていて、修行のことや、これから上る山のコースなどを説明することにも使われたそうだ。地元の食材を活かした精進料理煮物には出で羽わ三さん山ざんに見立てた月がっ山さん筍だけ、とろりとした餡がかかった胡麻豆腐、在来野菜を使った茄子の田楽に胡瓜の香物、ミズやウド、イタドリといった山菜を使った煮物や炒め物、だだちゃ豆のお味噌汁……。ひとつひとつが丁寧にそして彩も鮮やかな料理が並ぶ。山形県鶴岡市の出羽三山神社に伝わる精進料理では、地元の食材を活かし、時には、塩漬けや乾燥などの保存技術によって、野山で採取してきた山菜やキノコをおいしく食べる工夫がなされている。例えば、イタドリはアクが強く生のままでは食べられないため、塩漬けなどをして3~4週間たってアク抜きしてから調理している。季節に応じた旬の素材をふんだんに、あるいは雪に覆われる季節のために乾燥させたり塩漬けして保存させたものなど、その時々で得られる食材を上手に利用しているところに出羽三山の精進料理の特徴がある。第3回「食から見る地域」は、郷土色ゆたかな日本各地の「食」について、その文化的・自然的背景を知ることで、より深く味わっていただくコーナーです。写真1 たくさんの皿・山菜をはじめ在来の食材が並ぶ出羽三山の精進料理