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2015年度には5,422億円となりました。その後、2016 年以降4 年連続で増加となり2019 年度は5,566 億円の見通しですが、1997年度比でみれば約48%と未だ低い水準にあります。このような状況の中、JICAは2017年後半から運営費交付金事業の予算執行管理にかかる問題を抱えることとなり、一般勘定予算の運営費交付金が逼迫し、本予算を用いた執行予定案件の取り消し、遅延などが多く発生しました(図2)。現在JICAでは、予算執行管理強化のための専門部署の創設、ガバナンスの強化、システム改善などの対応が取られていますが、予算逼迫の影響が今しばらくは続くことが予想され、JICAを主な発注者とするコンサルタントの経営に大きな影響を与えています。JICAの入札制度の変更2018年7月に、財務省からJICAコンサルタント契約に関する予算執行調査結果が発表され、今後の改善点・検討の方向性が示されています(表1)。これを踏まえ、JICAでは2019年4月より、コンサルタント等契約においてQCBS( 質と価格による選定:Quality- and Cost-based Selection)を導入することを決定しました。基礎情報収集・確認調査、協力準備調査、詳細設計業務を対象とし、既に先行導入が始まっており、2019 年中に原則全てのコンサルタント等契約がQCBS又は一般競争入札(総合評価落札方式)のいずれかで選定されることとなる予定です。しかし、本入札制度の導入により、技術軽視やダンピング・実質受注価格の引き下げなどの発生を危惧する声も多く上がっています。海外治安状況海外業務では、疾病や食品衛生面などの安全・衛生管理上の問題に加え、近年大きく高まっているテロや治安のリスクを避けて通ることができません。2015年のパリ同時テロ以来テロ事件が発生しており、バングラデシュやスリランカでは日本人の尊い人命が犠牲となっています。建設コンサルタントの海外事業展開には人的資源が最大の資源です。海外事業の持続性確保の観点からは、政府レベルでのリスク対策の促進に加え、各建設コンサルタント自らがリスク管理・対応機能を拡充し、海外事業に携わる者の安全・安心を確保することが大きな経営課題の一つとなっています。おわりに8兆円を超えると言われている建設コンサルティング国際市場において、わが国の建設コンサルタントの業務量は1,200 億円程度((一社)国際建設技術協会の調査による)で、そのほとんどがJICA発注業務や円借款事業など、わが国の政府開発援助(ODA)に依存しています。このような状況は一朝一夕に改善できるものではありませんが、国際開発金融機関(MDBs)の業務の増加、そのための海外コンサルタントや現地のローカルコンサルタントとの提携強化、ODA以外の業務の拡大、PPP事業への参画など、様々な取り組みを行うことが、海外事業を実施する建設コンサルタントに求められています。1,981 1,532 1,666 1,395 1,263 1,117 1,047 906 688 4962009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018630540738565617 6545741,00379848902004006008001,0001,20005001,0001,5002,0002,500(件) (億円)件数金額図2 JICA 発注件数及び金額の推移(出典:JICA Web-site)区分今後の改善点・検討の方向性調達制度について現行制度は価格競争メカニズムが機能せず、我が国のコンサルタントの国際競争力を低下させている。原則全ての案件で、価格が相当程度加味される一般競争入札等に移行すべき。契約単価・契約方法について単価の高止まり、従事者の高齢化、非計画的な事業執行等を招いている現行の実費精算契約から、成果報酬(ランプサム)契約に移行すべき。質の向上に向けた取組について国際的に評価される優秀なコンサルタントを確保するため、①事後評価の活用に関する明確なルールの設定・公表、②国際的な受注実績がある者の評価、③外国法人・外国人材の起用制限の撤廃を行うべき。出典:財務省「平成30 年度予算執行調査の調査結果の概要」表1  JICAコンサルタント契約に関する財務省の予算執行調査結果(2018 年7月)Civil Engineering Consultant VOL.285 October 2019 051