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Consultant287
012 Civil Engineering Consultant VOL.287 April 2020コーヒーははじめから薬だった人が初めてコーヒーに出会ったときの記録はありません。羊飼いカルディが谷間の赤い実を食べて踊り狂ったという話は、コーヒーがヨーロッパに伝わってから書かれたお伽噺です(図1)。信頼できる最初の記録は10 世紀頃のペルシャの古典『医学集成』に見られます。そこに「コーヒーは胃に優れた効果を示す」と書いてあります。11世紀になると有名な『アヴィセンナの書』に、「吐き気のあるときに飲めばよい」と具体的に書かれました。ですからコーヒーは発見の瞬間から薬だったのです。そしてコーヒーはヨーロッパでも薬のようにして広まりました。イギリスでは大不況時代に蔓延したアルコール中毒の治療のため、医者がコーヒーを処方したとのことです。ドイツでは薬剤師がコーヒー輸入に精を出したそうですし、イギリスでも初期のコーヒーハウス経営者に薬剤師がいたとのことです。コーヒーの魅力は病人が飲むというのではなく、元気な富裕層が「身体によいものだから飲む」と言ってコーヒーハウスに通い続ける文化があったのです。ロンドン初のコーヒーハウスは1650 年頃の「パスカ・ロセの店」で、ここにはコーヒーの功徳を書いたビラが置いてありました。その実物が今も大英博物館に残っています(図2)。ビラを書いたのはオックスフォード大2 百寿を元気に過ごすコーヒーとは岡 希太郎OKA Kitaro特 集コーヒー/カフェ/まち東京薬科大学名誉教授コーヒーと人が出会ったきっかけには、薬として飲んでいた側面があるようだ。近年、コーヒーの成分の医学的な研究が進み、コーヒーの焙煎度合いによって効能が異なることもわかってきた。コーヒーが人に与える影響を医学と薬学的な知見から紹介する。図1 コーヒー起源伝説羊飼いカルディの名は今もコーヒーショップの名前になって残っています図2 コーヒーの効能を書いたコーヒーハウスの宣伝ビラ1652 年、旧ロンドン市のコーヒーハウスが店の宣伝に使ったビラ(大英博物館蔵)。矢印の部分に「コーヒーは浮腫病、痛風、壊血病を予防する」とあります