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巻頭言7月24日から開催予定だった東京五輪が延期されることが決定した。この困難を乗り越え、五輪が無事開催されることを願うばかりである。今回の東京五輪は異例続きであるが、「五輪の華」とされるマラソンのコースが、IOCの判断により、突然東京から札幌に変更されたことも、大変衝撃的な出来事であった。2020 年1月25日の日本経済新聞によると、2050 年の気象予測分析では、人口100万人以上の世界の大都市の6割超でマラソンなど屋外競技の熱中症リスクが高まり、「開催困難」との結果が出たとしている。この中には東京はもちろん、仙台まで含まれていた。冬季五輪に話は飛ぶが、2006 年トリノ大会で日本初のフィギュアスケート金メダリストとなった荒川静香さん、そしてソチ・平昌と二大会連続金メダルの偉業を達成した羽生結弦さんの功績を称えるモニュメントが、仙台市地下鉄東西線の国際センター駅前に設置されている。お二人とも仙台に所縁のある選手であり、フィギュアスケートの盛んな地として知られる仙台市だが、実は日本のフィギュアスケート発祥の地が、この駅のモニュメントから程近い「五色沼」という場所である。元々は仙台城の堀跡で、冬になると沼が凍ったことから、明治時代後期に旧制二高の生徒たちがドイツ語講師ウィルヘルム氏に滑り方を教わったという。後に彼らや後輩たちが全国で普及に努めたことから、五色沼は日本フィギュアスケート発祥の地と云われるようになった。1931年には、ここで第二回全日本フィギュアスケート選手権が開催されている。このように由緒あるスケート場であるが、現在は、というより随分前から使われなくなっていた。その主な理由は、言うまでもなく地球温暖化である。かつては大勢の人が滑っても跳ねても転んでもびくともしなかった分厚い氷が張っていたが、今では冬になっても凍結することがまずなくなってしまったのだ。仙台管区気象台ウェブサイト「東北地方の気象の変化」によると、1927~2018 年の統計データに基づく仙台(冬)の季節別平均気温の長期変化傾向は+2.9℃ /100 年とされているが、五色沼の今昔を考えた場合、「気温上昇はこれより遥かに高いのでは?」と感じてしまうのである。2019 年は、これまで以上に環境問題について考えさせられる1年だった。「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。よくもそんなことが言えますね!」。同年9月、国連の気候行動サミットでスウェーデン人の少女、グレタ・トゥンベリさんが訴えたメッセージは、世界に大きな影響を与えた。10月には、台風19 号が東日本で猛威を振るい、福島県や宮城県などではこれまでにないほどの台風被害となった。11月、東北地質調査業協会創立60周年記念式典で、ケンタロ・オノ氏の講演を聴いて、ここでも大きな衝撃を受けた。講演は、地球温暖化による海面上昇と地盤沈下のため、水没の危機にあるキリバス共和国で起きている被害をテーマにした内容で、鬼気迫る圧倒的な話術もあり、大変説得力のあるものだった。オノ氏は仙台市出身で、子供の頃から南太平洋に浮かぶキリバスの自然に憧れ、15歳の時に単身で高校留学し、その後帰化した日系一世である。愛するキリバスの島々が、地球温暖化により沈みつつある。この危機について一緒に考え、一人一人の行動に繋げてもらうことを訴えるために、2011年から仙台に在住し宮城県内外で講演活動を行っているのである。宮城県では2019 年度に「ストップ温暖化大賞」を創設したが、その第1号に選出されたのも、当然のこととして頷ける。翻って、現在の自分の環境問題への意識や取り組みはどうだろうか。かつてはISO14001の審査員資格を取り、自社の環境マネジメントシステム構築や他社への指導まで行っていたが、実務を離れてから意識が疎かになってはいまいか。SDGsのバッジを着けていても、ポーズ先行で十分な指導力を発揮出来ていないのではないだろうか。考えるほど、精進が足りないことを痛感させられ、反省することしきりである。これからは事業活動を通して、また市民としても暮らしの中で環境を守り、ストップ温暖化さらには持続可能な社会を意識した取り組みを実践することを決意し、また理解者を拡げるために、本誌巻頭言に述べさせて頂いた次第である。ストップ温暖化?私に出来ること?C o n s u l t a n t s菅原 稔郎一般社団法人建設コンサルタンツ協会 常任理事 東北支部長