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Consultant287

030 Civil Engineering Consultant VOL.287 April 2020内装とまでは行かないが、中古品の購入や支援者からの厚意の寄付としてアンティーク調の家具が集まり、結果的に7テーブル24席の客室のようなフリースペースが完成した。広々としたフリースペースでは新聞を読んだり、会話が弾んだり、珍客では小学生ペアーがおやつとペットボトル持参で宿題を始めたりと。近所の町会の方々による雪かきや流雪溝の管理についてのミーティングが始まったりと、まるで集会所のような感じになった。また、地域の小学生の父母と教師の会20名参加のコーヒーセミナーも大いに盛り上がった。この様子を地域貢献だと言って下さる方が多いが、貢献などおこがましい限りで、逆にこの地域に参加することで街のコーヒー屋として活かされていると感じる。もし何か価値を付加できたとしたのなら、美味しい一杯のコーヒーが、孤立してバラバラになりかけた地域のコミュニティーを緩やかにつなぎ始めたことにあると思う。良いコーヒーとはコーヒーの良し悪しは「収穫精製される原産地の生産者のところで全てが決まる」と言っても過言ではない。素材を超える技術はない。我々ロースターが出来ることは必要最小限の手を加えて最高鮮度で提供するだけである。つまり良いコーヒーを追求することとは、優れたコーヒー生産者の高品質な生豆を調達することに尽きる。我々の力強いパートナーに、エチオピアのMETAD社でコーヒーの品質向上と、労働者や小規模農家の生活向上に取り組む浅野文章氏がいる。彼はエチオピアに魅せられ、エチオピアに救われ、完全移住して毎年最高品質のコーヒーを供給してくれている。我々もその志に共感し、ダイレクトで透明性の高い取り引きで出来るだけ多くの価値をフィードバックすることに努めている。毎年、エチオピアでの収穫精製を終えた彼は、カッピング(コーヒーのテイスティング)のために新豆のサンプルを持って日本各地のロースター達を回る。そして我々が購入した生豆代金からのフィードバックが生産者にどのように使われたのか、画像や動画、データを見せながら丁寧に説明してくれる。このことは決してエチオピアの貧しい労働者や小規模農家の為だけではない。サスティナブルコーヒーの源泉を支えている現地の方々の生活や安心安全な環境が、少しでも改善向上しなければ継続のバトンは途切れてしまう。コーヒーを生業にしている我々の未来の為にも、5年、10 年、100 年と続けなければならない最も重要な課題だと思う。良いコーヒーの条件は、品質、鮮度、加工技術に加えて携わる全ての人々の顔の見える継続性の高いコーヒーのことだと考える。ちなみにサスティナブルコーヒーとは、現在のことだけではなく未来のことも考えた上で、自然環境や人々の生活を良い状態に保つことを目指して生産・流通されたコーヒーの総称である。場所の持つ魅力とは近年、我々の元に大型商業施設やテーマパーク、過疎化した地方の観光地物件からの相談が相次いでいる。カフェ部門を活性化して日常の集客と収益性の向上を図りたいという内容が殆どなのだが、実際に足を運んでみると、地域に住む住民や一般消費者からの支持が希薄で、観光客や団体旅行など外部からのお客様を主なターゲットにしているように見える。結果、繁忙期は滅茶苦茶に忙しくチャンスロスが多く、閑散期は人手不足によるサービスの低下や食材の廃棄ロスの問題が深刻である。安定した経営のためには、通年利用いただける地元や地域の方々からの支持が基礎となるはずだ。それではなぜ多くの建物や空間は地域とのつながりが希薄で、地元の人の集まる空間や地域の求心力を持てないのか。求心力を考えるヒントは「何のためにカフェを創る写真5 エチオピアMETAD 社の浅野文章氏写真6 丁寧に収穫された完熟コーヒーチェリー