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Civil Engineering Consultant VOL.287 April 2020 033生活の真ん中にあった舟屋江戸時代中期には自然に形成されていたという舟屋群。漁船の格納庫として、はじめは草葺であった舟屋は、1880 ~1950 年頃の鰤の豊漁等がもたらした好景気により、舟屋の新築や改築が進み、2階建ての瓦葺きへと変化していった。一般的な世帯は、舟屋のほかに、道路を挟んで山側に母屋も所有している。舟屋の1階は漁船を引き揚げる他に、魚を干したり、漁具を保管したりする場所、2 階は母屋の居住スペースから拡張された居室として、利用されるようになった。主たる居住スペースである母屋と舟屋を行ったり来たりする生活は、山に囲まれた平野部の少ないこの地域において、居住スペースを確保しつつ、生活を支える海の近くで暮らすための、最善の選択だったのである。現在では漁船の大型化等に伴い、1階に漁船を保管する舟屋はほとんどないが、舟屋を観光資源として活用し、1日1組限定の旅館や飲食店を営んでいるところも少なくない。伊根の朝朝8時過ぎ、大型定置網が揚がったことを知らせる町内放送が流れる。住民達は自前のバケツを持って漁港へ集まり、各々が目当ての魚をバケツに入れる。その場で量り査定された額を支払い終えた者は、バケツを持って自宅へ帰っていく。普段、スーパーでパッケージされた魚を購入している観光客にとっては鮮烈な光景だ。そんないかにも漁村らしい光景が、美しい舟屋とともに今もここに残っている。<参考文献>1) 伊根町HP、http://www.town.ine.kyoto.jp/2) 伊根浦伝統的建造物群保存地区まちづくりの手引き、平成30 年3月改訂版、伊根町教育委員会社会文化財保護係3) 漁村における家屋の機能変化とその要因-丹後・伊根浦の舟屋集落を例にして-、人文地理第42巻第2号(1990)、河原典史4) Iターン者による漁業資産引き継ぎと観光業への転用に関する基礎的研究-引継ぎに際する障壁への対応に着目して-、公益社団法人日本都市計画学会都市計画論文集vol.53 No.3 2018年10月、永島奨之、川原晋、野田満<写真提供>①、③:筆者②:成洋丸(海上タクシー)② 草葺だったころの舟屋③ バケツを持って魚を買いに来た住民