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Consultant287
Civil Engineering Consultant VOL.287 April 2020 003では、家主の留守のうちに太郎冠か 者じゃ・次郎冠者のようにコーヒーをガブガブ飲んだかというと、当時の自宅で粉からいれたコーヒーは、薄茶色のお湯のようで、味が薄くてコクがなく少しもおいしくありませんでした。親父も喫茶店や会社で飲むコーヒーと味が違うと言って、パーコレーター、サイフォン、ペーパードリップ、ネルドリップ等様々な入れ方を試みましたがおいしい味にはなりませんでした。現在では普通のコーヒーメーカーでいれたコーヒーを午前中に2杯、午後に2杯飲んでいますが、喫茶店のコーヒーと遜色のないおいしさです。おそらくその原因は、昭和39 年頃は一般家庭向けのコーヒー粉の流通が少ない、あるいはコーヒー豆が高い等の理由で、あまり品質のよくない豆から挽いて時間のたったコーヒー粉を、しかもケチって少ししか使っていなかったためではないかと想像します。最近ではコンビニでも100円でおいしいコーヒーが飲めますが、生産量の減少と需要増が重なり、コーヒー豆の不足が心配されています。需要については中国等のコーヒー飲用人口・頻度の増加、供給についてはコーヒー栽培地の減少です。コーヒーの栽培要件は、降雨量・温度・日照・土質の4つと言われており、ブラジル、ベトナム、コロンビア等赤道から南北25度線に挟まれた地域の山地が該当し、通称「コーヒーベルト」と呼ばれています。温度については、年平均気温20℃程度で最も暑い月の平均最高気温30℃以下が条件とされていますが、ワールド・コーヒー・リサーチによると、気候変動による気温上昇によって2050年には栽培適地が半減すると予測されています。このため、高温に強い品種改良や栽培方法の改善、新たな栽培地の模索等の適応策が進められており、日本でもコーヒーベルトを外れた鹿児島県徳之島(北緯27度50 分程度)でコーヒーの産業生産化が始まっています。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書では「、気候システムの温暖化には疑う余地がなく」「21世紀末までに世界平均気温が0.3~4.8℃上昇する」とされており、その影響はコーヒーだけにとどまりません。同報告書では「中緯度の陸域のほとんどで極端な降水がより強くより頻繁になる可能性が非常に高い」としています。日本では、令和元年の台風19 号による140 箇所にも及ぶ河川堤防決壊と88,000戸に及ぶ家屋被害、平成30年西日本水害、平成29年九州北部豪雨、平成28年北海道豪雨、平成27年関東・東北豪雨等、毎年のように各地で記録的な豪雨による災害が発生しており、すでに温暖化による降雨への影響が生じてきています。従来の日本の治水計画は、「降雨量の平均値と分散が時間の経過とともに変化しない」という定常確率過程を前提に、対象河川流域の過去の降雨量を統計処理して計画降雨を求め、流出計算、施設設計を行い、対象河川から氾濫が生じないことをもって「計画降雨の年超過確率=対象河川の治水計画の安全度」としています。このような方法では気候変動により降雨量が増大すると安全度が低下していくため、現在、気候変動を考慮した将来の気象条件の下で降雨をシミュレーションして治水計画を策定することが審議会等で精力的に検討されています。さらには、河川の本川の計画上の安全度だけではなく、台風19 号被害でも特徴的だった内水氾濫やバックウォーター等、支川や水路等による氾濫と、計画途上及び計画以上の降雨が生じた場合も含めた、地域の安全度評価を行って、河川だけではなく都市計画や建築構造も含めて国土強靱化を図っていく必要があります。大規模災害時に命を守るために避難することは必要かつ重要なことですが、建設技術者の使命は、大規模災害時にも逃げなくてもすむ川づくり・街づくり・家づくりを行い、人命と資産を守って、気候変動のなかにおいても持続可能な発展を図っていくことではないかと思います。図2 1950 ?2100 年の世界平均地上気温の経年変化(1986 ?2005 年の平均との比較)「RCP2.6」が最も気温上昇が低いシナリオで、「RCP8.5」が最も高いシナリオ(国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」提言参考資料より) 図3 地域の任意の地点の安全度をどのように表せばよいのか?