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Consultant287
■ はじめに近年、地震や豪雨などの自然災害が激甚化、頻発化している。このような中、災害の教訓を踏まえ、行政・住民・企業の全ての主体が災害リスクに関する知識と心構えを共有し、様々な災害に備える「防災意識社会」への転換が求められている。一方、発災から8年余りが経過した東日本大震災の被災地では、震災遺構の保存、慰霊碑や追悼施設の整備、語り部活動など、震災の実情や教訓を次世代に語り継ぐ「震災伝承」の取り組みが各地で数多く進められている。これらの取り組みをネットワーク化し、目的に応じて教訓を巡り学べる仕組みをつくることで、災害への備えを実体験として学べる機会を被災地のみならず全国各地の方々に提供できるものと考えられる。本稿では、産学官民の連携により実現しつつある、防災意識社会への転換に向けた先駆的な取り組み「3.11伝承ロード」について紹介する。■ 東日本大震災の被害平成23 年3月11日に発生した東日本大震災では、東日本の太平洋沿岸は500kmにも及ぶ広い範囲で甚大な被害を受けた。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が引き起こした巨大津波により、死者・行方不明者は2万人規模、家屋の損壊は100万戸以上、被災総額は約17兆円にものぼる未曾有の被害をもたらした。戦後の約70 年で見ても、死者・行方不明者が5千人を超えたのは伊勢湾台風(昭和34 年、5,098人)と阪神淡路大震災(平成7年、6,437人)のみであり、規模の大きさがわかる。政府の東日本大震災復興構想会議は、発災から2か月後に「復興構想7原則」を決定したが、この1番目として、「教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する」ことが位置付けられている。■ 各地に残る教訓東北の被災地には数多くの教訓が残されている。震災遺構をはじめ、震災をテーマとした博物館・資料館、石碑・慰霊碑、さらにはそれらの施設と連携した語り部活動など、形は様々であるがそれぞれに貴重な教訓が内包されている。以下にいくつかの教訓の例をあげてみる。津波の実相を知る岩手県宮古市にあるたろう観光ホテル(写真1)は、高さ17mを超える津波を受け、4階まで波に襲われた震災遺構である。ホテルの社長が屋上で撮影した津波映像を観ることができ、もとの町並が津波によって破壊され、津波が眼下の足下にまで迫る過程を現在の荒れ果てた光景と比較することにより、津波の恐ろしさを実相として知ることができる。東日本大震災の教訓に学ぶ?防災意識社会への転換に向けて?国土交通省東北地方整備局/企画部長(震災伝承ネットワーク協議会副会長)西尾 崇 NISHIO Takashi国土交通省東北地方整備局/企画課建設専門官松本 章 MATSUMOTO Akira写真2 仙台市立荒浜小学校写真1 たろう観光ホテル050 Civil Engineering Consultant VOL.287 April 2020