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Consultant287
避難とその備えを知る宮城県仙台市にある仙台市立荒浜小学校(写真2)は、地域の指定避難所となっていたが、2階まで津波が押し寄せた震災遺構である。児童、教職員、地域住民約320人がここで寒さを凌いで一夜を過ごし、ヘリコプター等で救助された。避難の判断と避難生活の様子、それを教訓とした災害への備えについて知ることができる。災害時の支援体制を知る岩手県遠野市にある遠野市後方支援資料館(写真3)は、沿岸被災地に対する後方支援活動についての記録資料を展示する施設である。この施設では、避難者の受け入れや避難所運営、他地域からの物資の受け入れ・供給を担う物資センターの運営など、災害時に基礎自治体が担う活動を知ることができる。行政と建設業界の備えを知る岩手県陸前高田市にある東日本大震災津波伝承館(写真4)では、被災した構造物の実物、インフラの被災の現場をとらえた写真などにより、元の生活を取り戻すために不可欠な社会インフラの迅速な復旧について知ることができる。震災直後の初動対応に対する様々な障害と対応、今後の改善の方向性などが示されている。東日本大震災以降も、熊本や北海道胆い 振ぶり東部での地震、各地での豪雨災害等、国内各地で災害が頻発している。南海トラフでの大規模地震の発生確率が30 年以内に70 ~80%とされているなど、今後の地震・津波の発生リスクも高まっている。台風や豪雨についても、時間降水量50mm以上の降水量の年間発生回数は経年的に増加傾向にあり、洪水の発生リスクも高まっていると言える。一方、災害が起きた場所を調べてみると、多くの場合、過去にも災害が繰り返し起きていることがわかる。平成30 年7月に発生した西日本豪雨災害では、111年前の洪水被害を語る「水害碑」(写真5)があったが、この事実を知る人がほとんどおらず、先人が残した教訓は助かる命を救えなかった。「災害列島日本」においては、いつどこで災害が起きるかわからないという認識に立ち、自分自身の災害リスクと有事の対応について正しい知識を持ち、日頃から備えておくことの重要性が高まっている。■ 教訓を学べる仕組みづくり震災伝承ネットワーク協議会の取り組み東北の被災各地には数多くの貴重な教訓が残されているが、個々の取り組みだけでは東日本大震災の実情や教訓を総体として知ることは困難である。このため、被災地における震災伝承を効果的・効率的に行うための連携を図ることを目的に、「震災伝承ネットワーク協議会」(東北地方整備局、青森県、岩手県、宮城県、福島県、仙台市)を平成30 年7月に設置し、12月に取り組み方針をとりまとめた。震災伝承の取り組みをネットワーク化(点から線へ、線から面へ)し、総体でメッセージを発信することにより、防災力の強化と被災地の交流促進や地域創生を図ろうとするものであり、具体的な取り組みは次の3つの柱で構成されている。① 震災伝承ネットワークの運営・伝承ロード形成② 防災プログラムの基盤形成と開発③ 復興に向けた地方創生・地元支援この取り組みについては、国土交通大臣、岩手県・宮写真4 東日本大震災津波伝承館写真3 遠野市後方支援資料館写真5 広島県坂町の水害碑(撮影:大阪府警)Civil Engineering Consultant VOL.287 April 2020 051