一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 九州支部

コラム

第19回夢アイデアまちづくりの審査を終えて

令和4年1月

 2021年の師走の某日,新型コロナ感染症の予防対策が継続される中,1次審査を通過した10件の夢アイデア提案者の発表および審査を兼ねた交流会が開催されました。昨年に続き,10名の提案者を含む60名の会場参加とおよそ100名のオンライン参加の併用形式での開催でした。

 今回から,審査委員会のメンバーが刷新され,6名の審査委員のうち5名が新人に交代しました。

 私は,建コン九州支部の担当者から,平成22年から11年間委員長を務めてこられた前委員長の玉川孝道氏(西日本新聞元副社長)からのご指名だとお聞きし,日頃より尊敬申し上げている玉川氏からの光栄なご推薦ということで,甚だ役者不足とは思いつつ第4代目の委員長をお引き受けさせて戴きました。と言うことで,初めて夢アイデアの審査に携わらせて戴いた者としての素朴な所感を以下に述べさせて戴きます。

 以前より,この夢アイデア事業は,建コン九州支部が企画実施している一般市民向けの活動で,業務としても関連するまちづくり,地域活性化に類するアイデア募集と同時に,自らの業界PRに対してきわめて有用な良いプロジェクトだな,くらいの印象をもっていました。しかし,今回の審査を経験して,自分自身の中でさまざまな新たな発見があり,あらためて本プロジェクトの意義の深さに敬服した次第です。本プロジェクトが開始されて20年目,今回のようなコンペ形式で19回目という息の長さからも頷ける話ですね。

 さて,今回の応募総数は46件。応募者の在住先としては,北は北海道から南は鹿児島まで。また年齢は,73歳の年金生活者から10歳の小学4年生まで,また職業も,もちろん建コンの協会員会社の職員や大学等の研究者も含まれていますが,その他に一般の会社員や主婦,大学等の学生,小中学生,変わったところでは作家の方まで,幅広い分布となっていました。これは,今回だけのことではなく,ここ最近は毎年,同様な傾向にあるとのことです。このことからも,主催者側のめざす一般市民からの夢アイデア募集という目的が十分に達成されているものと思われます。

 その中で,私が最も驚いたのは,次世代をになう小中学生の応募が13件もあり,全体の20%を占めていることでした。聞くところによると,その大半は昨年度同様,鹿児島県の学習塾の生徒たちだそうで,塾の先生ご自身からも応募して戴いたとのことでした。初等・中等教育における,わが国のこれまでの偏差値重視の教育に対する反省から独創性,主体性を養うことの必要性が求められている中,自分たちの住むまちや環境,くらしなど,幅広い分野で夢やアイデアを語り,かつ表現し,そしてそれを人前で発表して討議するという,一連のプロセスを見事に堂々とやってのけた10~12歳の小学生たちのパフォーマンスのすばらしさと将来性に大いに感動しました。特に,最終審査に進まれた2名の小学生に賞賛の言葉を送りたいと思います。

 この時,ふと思いだしたのが,米国ニューヨークのマンハッタンに架かるブルックリン橋という吊橋の設計者,ジョン・ローブリングのことでした。ブルックリン橋は今から140年前に建設され,今も立派に使用に耐えている近代長大吊橋の祖ともいえる当時世界最長の吊橋です。この橋を設計したローブリングは,ドイツで生まれ育ち,長大橋を架けたいとの夢をもって25歳の若さで米国に渡り,63歳でブルックリンを設計するのですが,何と彼が9歳の時に,ブルックリン橋と同じ形の模型を作っていたというエピソードが残されています。夢を持つこと,そして,その夢に向かって努力することの大切さを示唆するものと言えます。加えて,必須でもないのに,本プロジェクトへの応募を子供たちに推奨し助言指導して戴いた学習塾の先生の教育熱に対しても敬意を表します。

 次に,特筆したい点は審査の難しさと楽しさです。私は,審査員としてこれまでさまざまな審査を経験してきましたが,今回の夢アイデアほど,選別化して優劣を判定することの難しさ,その半面,提案書を読んだり,発表を聞いて審査する時の楽しさを感じたことはありません。それは,募集テーマが「テーマは何でもOK! まちづくり,地域振興,観光,景観,環境,農業,子育てなど,何でも自由。夢のような話も,実現が難しいかも知れないアイデアも!」とあるだけでかなり抽象的であり,かつ審査基準,内規も特に定められていませんでしたので,各審査委員はそれぞれの思い,理解の下に審査しました。前述のとおり,応募者の年齢層,職業,性別など,さまざまで,各人のおかれた環境や価値観の下での提案を,評価し選別化することはきわめて難しいとしか言いようがありません。しかし,半面,実現性の有無は脇において,夢のあるアイデアを読み聞かせてもらえる楽しさは格別でした。審査の結果やその過程を暴露するのは拙いと思いますがご容赦いただくとして,応募46件に対する1次審査で,各審査委員が最優秀として選定した提案は,6名すべて別々のものとなりました。このことだけを持ってしても,審査の難しさを示唆しているかと思われます。

 もちろん,いずれの提案も一見の価値のある夢アイデアがほとんどでした。その中から,6名の審査委員と対面およびモニターで当日参加した聴講者の方々からの投票結果を基に,審査委員会で総合的に審査した結果,最優秀賞1件(「棚田から地域を元気に」),優秀賞4件,佳作5件が最終的に選定されました。受賞された応募者の皆さんに祝福の言葉を送るとともに,惜しくも受賞を逃した応募者の方々には,是非とも次回こその雪辱を期すことをお願いして,第19回の夢アイデア審査を終えての所感とさせて戴きます。

日野 伸一(九州大学名誉教授)
夢アイデア審査委員会委員長(令和3年)
夢アイデアホームページ