一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 九州支部

コラム

第15回夢アイデア審査を終えて

平成29年12月

 まちづくり「夢アイデア」事業は、今回で15回を迎えました。15年間、この事業を続け、裏方に徹してこられた建設コンサルタント協会九州支部のスタッフの皆さんに敬意を表します。市民住民自身がまちづくりの為、夢とアイデアを提案する全国的にも稀な事業を続ける「持続する志」に敬意を表します。地方創生はなかなかの難事ですが、住民の夢とアイデアがエネルギーの源です。

 さて、今回の応募作品は36点、例年比べやや少なめでした。応募者はこれまでに、北海道から沖縄まで全国に広がってきましたが、今年は留学生など外国の若者の応募もあり、その広がりと深みを増した事業となりました。

 さて、審査員の皆さんは第一次審査から最終審査会まで、随分、頭を悩まされたようです。ここからは私の個人的感想です。

 何と言っても、「夢」が人間に生きる力を与えるものだと、改めて感銘を受けました。仕事柄、2度にわたる九州北部豪雨、熊本地震の被災現場を幾度も通い、取材してきましたが、その息をのむような自然の猛威、悲惨な被害実態に立ちすくみました。被災者にとって、不条理としか言えない悲劇です。

 しかし、今日、特別賞を獲得した阿蘇の山内さんが語る「夢アイデア」を読んで、その夢を語り、未来へ立ち上がる姿勢、何よりエネルギーに圧倒されました。「夢を本気で考えよう」の呼びかけに答えて応募したと言う山内さんの提案書は98ページにわたる、しかも大半が手書きで「必ず再生するぞ」の気迫が心に残ります。

 「生きる力」と言えば、最優秀賞に輝いた「便器のないトイレ」の提案(徳永佳子さん)があります。人間、誰にでも来る老化。ふと、私が一番好きな作家・山本周五郎を思い出させました。最後の作品は、人生を重ねた「ながい坂」ですが、今年は没後50年です。随分わがままで、奥さんに苦労を掛けた時代物を得意とする作家ですが、「君には、僕の下の世話だけはさせないよう、死んでゆく」と言っていたそうです。登場人物は誠実で一途な男、きりりとした女性が多い時代小説で、直木賞なども受賞を断った人です。

 人間の尊厳にかかわる人生の終末をどう生きるか。校長先生までされた人が、痴ほう症になり施設に入りましたが、「汚した」と職員から怒られ、風呂に沈められて亡くなった暗いニュースを聞きました。人間は尊厳をもって、死に至りたいのはかなわぬ願望なのでしょうか。介護の重荷を背負いながら、この思いやりのある「便器のないトイレ」の発想は、高齢化社会に生きる我々に力を与える「夢とアイデア」であり、勇気づけられました。便器のシステム、移動など完成には、さらに専門家の助けが必要ですが、介護の苦労をなめた人でないと発想できない「夢アイデア」でしょう。

 優秀賞の「ちくごプラージュ」の提案も介護、高齢化、子育てなど切実な問題に直面しながら筑後川河川敷に「こうあったらいいな」と次々と夢を膨らませた提案でした。すでに筑後川河川敷は親水性を高める様々な利用が行われてはいますが、この提案のように、より身近な発想が今後求められるのでしょう。

 「地域ケーブルテレビのさらなる発展」(熊本県。高森町)や「ふるさとドローン」なども同じ高齢化社会の課題に取り組む提案でしかも実行可能な提案だ、と思います。

 今回の応募作品に留学生の提案があり、プレゼンテーションも見事でした。留学生を多数受け入れるだけが、大学の国際化ではないだろう。これからの町づくりは、より地域に密着した国際化を進めなければならないことを教えられました。このような提案が留学生から行われる夢アイデア事業の貴重さを改めて思わされました。(完)

玉川 孝道(西日本新聞元副社長)
夢アイデア審査委員会委員長(平成22年~)
夢アイデアホームページ