一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 九州支部

コラム

第16回夢アイデア審査を終えて

平成30年12月

慰められ、励まされる53の夢たち 津々浦々、老若男女の夢を集めて

 毎年のことながら、「夢のような話を、本気で」考え抜いた応募作品を1頁1頁めくりながら、その夢の一つひとつ、応募者の思いに心を馳せるのは、大変な楽しみである。

 今年は53作品、つまり53の「夢とアイデア」が集まった。小学生グループから80歳近いOBまで、世代を超えて「夢見る人々」たち。北海道から地元九州まで全国、いや、留学生まで、「真面目に」夢見る人々に応募していただいた。老若男女、全国津々浦々から「夢」が集まる、稀有な広がりと多彩さを、この事業が16回もの回を重ねる中で獲得していることを物語っている。

 今年の作品の特徴は二つあったように思う。

 まず、私たちの身の回りにある「荒廃した光景」の前に立って思いを巡らせていることだ。例えば、背丈ほども雑草が伸びた休耕田、子供の姿も歓声も聞こえない都市公園、車に独占された道路、火山灰に汚れた街、幼いころのトンボが飛び交う原風景の面影もない荒れた故郷の姿などなど、眼前にある、その荒涼とした風景の前に立って、再生の夢を、夢見る

もう一つは、毎年のように繰り返される自然災害、その猛威を受けた古里の変わり果てた光景と苦難に立ちすくむ被災者の姿に思いを寄せ、何とか蘇りの夢を探そうとする。かつて経験したことのなかった広域停電・ブラックアウト。単に灯が街から消えるだけでなく炊事から洗濯、トイレまで生活がマヒしてゆく。この暮らしのインフラの脆弱さは、何とかならないのか、と太陽光を活用した自家発電や大型蓄電が出来る電気自動車の活用など様々なアイデアを巡らせる。

 そんな景色からくる寂しさと苦い思いを、切り替えてくれるのが「夢」だ。応募作品を読みながら、ふと、黒沢明監督の最晩年の映画「夢」の中の一挿話を思い出した。

 「こんな夢を見た」で始まる4つか5つの夢の中で、桃の節句のお雛様飾りの前ではしゃぐ少女たちから逃れるように外に出た少年が、一面切り倒された無残な「桃畑」の前に立つ。やがてその段々畑に、本物の内裏様はじめ三人官女、五人囃子らが現れ、平安絵巻を繰り広げる。色彩の美しさ、艶やかさ。やがて、夢が覚めると、切り倒された一株だけが芽をだし、桃の花が咲きこぼれる。

 私たちは、この少年のように夢見ることによって、慰められ、励まされる。夢はどんなに大きくとも、遠くとも良い。楽しく、「そう、と。あったらいいな」 特に心を明るくさせる夢がいいし、それを実現するアイデアがあれば最高だ。

 最優秀賞に選ばれた「豚で耕作、荒れ地を豊地へ」は、荒れた休耕田にブタを放牧、草を食べさせ、蘇らせよう。鹿児島名産の黒豚を休耕田に放牧、豚が耕した休耕田にサツマイモを植えようーーと。提案はユーモア満載の漫画で。なんと提案者のお母さんは鹿児島・鹿屋市から遠路、4カ月の赤ちゃんを抱えて現れた。表彰式は授乳と時間が重なって、主催者をあわてさせた。ほほえましい夢の光景だった。若いママがこんな夢を見ていた、とみんなの顔がほほ笑んだ。

 ふとよぎったのがこの「夢アイデア」事業の初期にヤギに雑草を食べさせるアイデア、その後、子供たちに愛される事業となったが、類似性は否定できない。提案の全体的にも若干、夢の大きさと多彩さが欲しい、もっとでっかい夢を、と思うのはよくばり、というものだろうが。もっと、夢を。来年が楽しみだ。(玉川孝道)

玉川 孝道(西日本新聞元副社長)
夢アイデア審査委員会委員長(平成22年~)
夢アイデアホームページ