一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 九州支部

コラム

夢アイデアの可能性を探ろう!

平成29年9月

皆さん、夢アイデアはとても大きな可能性を秘めていると思われませんか。

戦後、焦土と化した我が国がやることは明白でした。すなわち、最低限の衣・食・住の欲求をいかに満たすか……。社会開発の方向も内容も迷うことない時代が続きました。戦災復興とオーバーラップして、都市化やモータリゼーションの到来によって道づくりに明け暮れる日々が続きました。生活面では喉から手が出るほど欲しかったのが三種の神器。1950年代後半からは、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫。高度成長時代は3C=カラーテレビ、カー、クーラーでした。それらが生産と消費の好循環を形成し、高度経済成長に拍車をかけてきたわけです。ですが、東西冷戦終結辺りから様子が変わってきました。

熱狂的な憧れを抱かせる国民的なアイドル商品はありません。衣食住の必需品に一応の充足をみた今日、市民、国民の欲求も価値観も多様化し、国民的に渇望する商品は簡単には生まれそうもありません。

とはいえ、道路とユーザーとの間に温かい交流のツールを提供した“道の駅”は、三種の神器に匹敵する発明品だったのではないでしょうか。「ヤギ羊ECOプロジェクト」は"雑草は人力で刈る"という常識を覆しました。炎天下の草刈りは、農事者いじめの最たるものです。未だに農村の風景を大きく変えるに至っていませんが、将来の農業担い手の減少と高齢化や、省力、省エネの要請を鑑みると、ECOヤギ羊は草地管理をドラスティックに変える可能性を秘めています。

夕陽風景時計は福津海岸の夕暮れの風景価値を飛躍的に高めました。

以上の事例はいずれも市民の夢アイデアに端を発したプロジェクトです。もっともっと市井の民に、夢やアイデアを訊いてみたい心境になってしまいます。

巷間に漂う"夢アイデア"鉱脈をもっと掘り続け、その可能性を究めてみたい。それが素直な気持ちです。

夢アイデアプロジェクトの効用の一つは、今見た"社会開発"すなわち、社会システムに新しい価値や効用を創り出すこと。

二つ目は、それに関わる人びとの人間開発の視点です。夢アイデアの学び舎における切磋琢磨を通して自らを高めることによって、また応募者にとっては限りなく夢とアイデアを追求することによって、自己実現に資すると考えられます。

三つ目は、新たな公共層の拡充に資する視点です。夢アイデアは私たちのCSR=社会貢献事業と考えられていますが、余力のない政府部門の補完層としての"新たな公"の担い手を拡充する機能があります。

四つ目は、真のコンサルティング能力の向上です。ひところ、全国のまちづくりが画一的、没個性であるとの批判が聞かれました。その一翼を担ったのは紛れもなく私たち建設コンサルタントであったはずです。近い将来、あの広場は地域風土や歴史文化を反映した、建設コンサルタント士、Mr.A氏の技術提案だ、といった、欧米並みの高い評価をエンジニアがいただける未来を夢みたいと思います。

このように多くの効用が期待される夢アイデアプロジェクトですが、実態は? というと極めて“ささやかな取り組み”にしかないと言わざるを得ません。

建設コンサルタント企業に勤務し、通常の業務をこなしながらボランティアとして可能な範囲で参加しているのが実情だからです。特に、個々のプロジェクト実現化に費やす労力は小さいものではありません。応募案件に比して実現したプロジェクト数が圧倒的に少ないのはその理由によるものです。(この課題をいかに克服するか、知恵の絞りどころと考えますが、まずは今日までの事業評価を整えた次のステップの最大課題となると予想されます)

常識を超えた豪雨災害、地震津波、所得格差、貧困起因の犯罪等激増……。問題は返って深刻さを増しているかに見えます。それら諸問題の解決に向け、ないしは更なる価値の創造に向け、建設コンサルタンツ協会のみならず、多くの分野で夢アイデア手法が試行され、積み上げることによって、その多様な効用が見えてくることが期待されるのですが、皆さん、いかがお考えでしょうか。

針貝 武紀 (初代夢アイデア企画委員長
       現・特別顧問)
夢アイデアホームページ