世界の土木遺産

烏山頭ダム(台湾、新営)
近くに公園も整備された烏山頭ダム全景
■ 近くに公園も整備された烏山頭ダム全景

「烏山頭ダム」

ダム湖外側から見た堰堤
■ ダム湖外側から見た堰堤

台湾の中央西部、嘉南平野東方の山地にある巨大ダム「烏山頭ダム」。人口約75万人(2005年時点)の都市、台南市の北東約40kmに位置している。貯水池が珊瑚の形をしているため珊瑚潭とも呼ばれる。工事には10 年を要し、完成は1930 年、日本の台湾統治時代である。建設以来、嘉南平野に広がる水田の水がめとして大きな役割を担っている。
ダムの建設を指揮したのは、明治末期に台湾に渡った一人の日本人土木技師八田與一である。彼は大学卒業後、仕事に腕を振るえる場として台湾に就職の道を選んだ。また、ダム工事に際して彼は当時のダム先進国アメリカに出張し、見聞を広めるとともに多いに議論した。結果的には自論であった“セミ・ハイドロリック・フィル工法”(水の流れに乗って運ばれる土砂が重い粒子の順に堆積する原理を利用)を採用した。
ダムの堰堤長1.35km、堰堤盛土高さ51m、完成当時の満水貯水量は日本の黒部ダムの75 %に相当する1.5 億tm3、ダム湖面積は6,000haにおよぶ。またこのダムから配水する15万haの灌漑地には総延長16,000km の給排水路を同時に建設している。
さらにダム工事に伴って烏山頭に集まった約2,000人の人々のために、病院や学校を建設するなど、ダム、灌漑用水の他に地元に多くのものを残した。現在でも地元では「八田ダム」と呼ばれている。

【アクセス】
「隆田駅」下車。そこから車で嘉南村(烏山頭水庫)へ。

【地図】
googleマップで烏山頭ダムの位置を確認する

「土木遺産II アジア編」

<<コチラにも掲載されています。
「土木遺産II アジア編」
ダイヤモンド社刊

   

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