今から約800年前、東南アジアには大きな勢力を誇るアンコール王朝があった。その巨大王朝の首都の跡が現在のカンボジアにあるアンコール遺跡群である。そこにはこのアンコール王朝が建設した、雄大な姿をもつ石橋がある。これまで日本ではほとんど紹介されていない幻の石橋「スピアン・プラプトス」である。
アンコール遺跡群から東に約60km、カンポン・クディという小さい町にあり、12世紀後半〜13世紀初頭にかけて、ジャヤヴァルマン7世王が建造させたものと言われる。この時代の石橋で現存するものとしては、東南アジアでも最大級のものだ。チカレン川にかかるこの石橋は、全長87m、石造りの橋脚は20を数え、使われた材料(砂岩とラテライト)はアンコールワットと同じものである。
石橋の開口部は幅が狭く、スリット状の細長い形になっている。開口部は、両側から石材を長さの1/3ほど内側にずらして迫り出して重ねていき、最後に真中で合致させる「せり出し構造」と呼ばれる方法で作られている。
アンコール王朝は国の各地を結ぶ道路網を持っていた。アンコールを中心に放射状に道路が伸び、その総延長は数百kmに及ぶ。スピアン・プラプトスの石橋は、アンコールから南東方面に伸びる広域の幹線道路に架かる橋であった。この石橋は現在も国道6号線が通る現役の橋である。
【アクセス】
シムリアップ市から、国道6 号線を東へ車で2時間、約60km行ったチカレン川にかかる石橋。
【地図】
googleマップでプラプトス橋の位置を確認する
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