「都江堰」は、中国・四川省の省都・成都の西方約60km、岷江(みんこう)の中流部に位置し、秦の時代(BC221〜BC206)に築造された水利施設である。当時の蜀の郡守・李冰が創建者で、その後歴代の増修によって完全なものになったとされている。岷江は全長が700kmを超え、四川省の険しい山々を縫って流下し、最後は長江(揚子江)に合流する大河川である。都江堰が築造された場所は、岷江が山地から平地に出る境目、扇状地の扇頂部に当たり、激流で押し流された岩石や土砂が堆積し、昔から洪水を繰り返す治水の要の地であった。また当地は、岷江の流れが大きく西側に回り込んでいるため、水量の少ない時期には、岷江の東側に大きく広がる成都平原へ豊かな水が届かず、干ばつ被害が深刻化していた。
都江堰は、岷江の氾濫による水害を治めるとともに、成都の大平原に岷江の水を引いて地域に豊かな恵みをもたらし、後の秦の天下統一に大きく貢献したといわれている。以来、2200
年余りの時を経た現在も、農業用水ばかりではなく、生活用水・工業用水をも賄って地域に豊かな恵みをもたらしている。幾多の時代を超えて今なお貢献し続けるその姿には驚嘆せざるを得ない。中国では「万里の長城」「南北大運河」「都江堰」を古代の三大土木工事と称しているが、築造当時の役割を脈々と果たし続けているのは「都江堰」のみである。
【アクセス】
成都市北駅58km、茶店子バスターミナルより高速バスで約90分。「都江堰」で下車。
【地図】
googleマップで都江堰の位置を確認する
|