世界の土木遺産

西バライ(カンボジア・シェムリアップ)
わずかに往時の姿を残す西メボンの祠堂
■ アンコール王朝最大の人造湖、西バライ

アンコール朝の繁栄の源「西バライ」

遥かに続く街路樹と芍陂の堤防道路
■ わずかに往時の姿を残す西メボンの祠堂

カンボジアのシエムリアップには、アンコール朝時代(802〜1432年)に造営された今も水を湛える巨大な貯水池“西バライ”がある。
周囲には有名なアンコールワット、アンコールトムをはじめ数多くの石造遺跡群があり、航空写真で見ると幾つかの長方形に気付く。これらすべてが同時期に造られたバライの遺構である。西バライはアンコールトムの西に位置し、東西8km、南北2.2km、一周するとハーフマラソンに相当する最大の規模である。
この地方一帯は乾季と雨季の降水量の差が激しい。王朝の最盛期の人口は60〜100万人と推定され、水源の確保が重要であったことが伺い知れる。バライはウダヤーディティヤヴァルマン世王時代の1020 年頃に完成されたが、やがて王朝の衰退とともに土砂が堆積し機能を次第に失っていった。だが西バライだけは、その活用を考えたカンボジアの保護国であったフランスによって1940年代に再整備された。
西バライ中央の小島(西メボン)にある井戸は、導管を通じて湖水と繋がっている。井戸の内壁に当たる枡は下から順に円形、八角形、四角形に造られ、水面がどの形にあるかで西バライの水位を知り、灌漑作業の時期などの判断に使われた。西バライの水はいまも灌漑や生活用水として住民に利用されている。

【アクセス】
シエムリアップ国際空港のすぐ北側。

【地図】
googleマップで西バライの位置を確認する

「Consultant」230号

さらに詳しくご覧になりた方は、
<<「Consultant」230号 掲載記事へ

掲載記事をご覧になるには
Adobe Reader
が必要です。

「土木遺産II アジア編」 <<コチラにも掲載されています。
「土木遺産II アジア編」
ダイヤモンド社刊

建設コンサルタンツ協会