日本の土木史において、土木技術の近代化が大きく進んだのは
明治中期に入ってからである。
河川分野においても、西洋の近代的科学の導入により水理現象が定量化され、
それまで各地域の経験値に頼るところが大きかった河川工事は
一定の基準のもとに進められるようになっていった。
そして、生活の利便性や安全のために様々な河川構造物が建設され、
一定の国土の整備も進んできている。
しかし近年、地球温暖化の影響もあり世界中で洪水や干ばつが増え、
日本においても毎年記録的な豪雨が頻発し、
深刻な被害につながることも少なくない状況となっている。
現在の激しい気象変化による災害は、
自然現象に対する人間の非力さを実感するものでもある。
こうした中、西洋の土木技術や土工機械を持つ以前の日本人に目を向けると、
彼らには必ずしも強固な堤防や水門を造る技術はなく、
時に自然に対し受け身にならざるを得ないこともあったであろう。
その地域の特性に応じて、様々な工夫を凝らして命をつなぎ、
地域を作り、生活や社会を守り続けてきたのである。
その考え方や工夫は、今の我々にも参考となるところもあるのではないか。
彼らは、どのように水を確保し、どうやって洪水に対応し、
その地域をつくり上げてきたのか。
当時の制約の中で、先人たちがその地域特性を見極めつくりだしてきた
技術や知恵をうかがうことができる施設や仕組みを紹介する。
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