海外とかかわる仕事につくには

建設コンサルタントという仕事

海外とかかわる仕事につくには

藤冨さんと同じような仕事をしたいと思ってる小中学生に、アドバイスをお願いします!

とにかく興味(きょうみ)を持ったことはなんでも、とことんやってもらいたいなと思います。英語が好きだから英語をがんばる、算数が好きだから算数をがんばる、絵が好きだからがんばって絵をかく、いろんなことをやればいいんですよ。

ただ、みなさんに言いたいのは、かんばるものを2つ以上持ってほしいということです。1つのことにこだわって、それだけを一生けんめいがんばるっていうのは確(たし)かに素晴(すば)らしいのですが、たとえば絵が上手で英語も得意というように、2つのことができる人は、すごく特別な存在(そんざい)になります。いろんなことを好奇心(こうきしん)を持ってがんばることで、どんどん自分の「強み」がふえていくわけです。これは社会に出て仕事につくとき、とても有利なんですよ。わたしの今の仕事は、毎日いろんなことが起こります。あつかう分野もものすごく広いので、こういう「強み」が多いほど、必ずプラスになると思います。

 

それから、自分が大学生だったとき、もうちょっと勉強しておけばよかったなと、今でも後悔(こうかい)することがあります。大学で教わる基礎知識(きそちしき)というのは、しっかり勉強して身につけておくと、それだけでけっこう世界で通用するものなんです。大学や大学院では卒業後、すぐにでも一人前のエンジニアとして活やくできるような教育をしてくれているんですね。わたしは会社に入ってから、そのことを実感するようになりました。ですから、みなさんも学校での勉強は、きちんとしておきましょう。

海外で仕事をしたいなら、英語は話せたほうがいいのは確かです。でも学生時代に全然英語を勉強してなくても、会社に入ってから学びとっていく人はいくらでもいます。英会話教室などに通わなくても、仕事の現場(げんば)が英語力をきたえてくれますよ。自分は今、英語がとても苦手だから、海外で働くのは無理だ、なんてあきらめないでくださいね。

この仕事にはどんな性格(せいかく)の人が向いていますか?

1つは好奇心おうせいな人。やっぱりいろんなことに興味を持てないとダメだと思います。それから人とコミュニケーションをうまく取れる人。いろんなタイプの多くの人たちとかかわる仕事ですからね。建設コンサルタントというのは専門分野(せんもんぶんや)のスペシャリストであることはもちろん大事ですが、ひとりではできない仕事なんです。人とのコミュニケーションを大事にしながら仕事を進められる人が、向いていると思います。

そして海外では、毎日のように思わぬできごとにぶつかります。これは極たんな例ですが、バングラデシュでは2016年にテロがありました。そういう予想もつかないことが起こる可能性(かのうせい)だってあるんです。ですから、どんなことがあっても落ち着いて行動できる人、冷静な判断(はんだん)ができる人が向いています。そうは言っても、わたしだって若(わか)いころは冷静でいられないことがよくありました。社会に出て、19年間、さまざまな経験(けいけん)を積みながら、感情(かんじょう)をコントロールする方法を身につけていったのかもしれません。

海外で暮らす藤冨さん家族。海外で暮らすのはたいへんだけれど、得ることも大きいと感じるそうだ。 海外で暮らす藤冨さん家族。海外で暮らすのはたいへんだけれど、得ることも大きいと感じるそうだ。

日本をはなれて海外で暮(く)らすと、苦労することも多いのですが、素晴らしいこともたくさん経験して、必ず自分にプラスになるような気がします。

わたしには息子がひとりいて、今11歳(さい)、小学校5年生です。小学校1年生のときからダッカで暮らしていますが、こんなことがありました。日本人学校に通っていて、修学旅行はシンガポールだったのですが、息子はシンガポールのお土産に、なんと日本のキュウリを買ってきたんですよ(笑)。日本のキュウリはとても品質(ひんしつ)が良くておいしいんですけど、ダッカには売っていません。だからシンガポールで見つけたとき、うれしくなって買ってきてくれたんでしょうね。

日本にいるみなさんにとって、おいしいキュウリが食べられるのは当たり前のことでしょう。でも息子は、そのおいしさにすごく感動して、キュウリ1本でも大事に味わいます。このように物を大切に思う気持ちを持ってくれるようになったのは、海外生活で得たよいことだと思っています。

最後に、藤冨さんの夢(ゆめ)を教えてください。

笑顔で夢について話す藤冨さん。今の仕事はとてもやりがいがあるそうだ。 笑顔で夢について話す藤冨さん。今の仕事はとてもやりがいがあるそうだ。

やっぱり鉄道をつくる仕事がおもしろいので、いろんな国で鉄道事業を手がけてみたいですね。一番の夢は、日本とヨーロッパを鉄道でつなぐこと。日本とシベリアの間に海底トンネルをつくれば、日本の鉄道とシベリア鉄道とヨーロッパの鉄道が全てつながるので、ぜひ実現したいですね。日本が「島国」でなくなるというのは、すごいことです。たとえば日本でつくった車を、鉄道でヨーロッパや中央アジアに運べるようになったら、日本の経済(けいざい)はもっと元気になるでしょう。

個人的(こじんてき)な夢としては、わたしは山口県出身なので、大好きな故郷(こきょう)・山口県に恩返(おんがえ)しできるような、地方を元気にする事業の手助けになるような仕事をやってみたいなと思っています。地方都市はどんどん人口が減(へ)っていますし、お金の面でもきびしくなってくるでしょう。わたしが学んだ知識が少しでも役に立つなら、その知識を使える仕事で故郷に恩返しができるようになればいいなと思います。

藤冨さん、どうもありがとうございました!

取材日:2018年11月15日
取材/文:石井美佳(アイプランニング)/撮影:徳永徹/
写真提供:日本工営株式会社
協力:学研キッズネット
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