景観(けいかん)デザインの仕事につくまでの道のり

建設コンサルタントという仕事

景観(けいかん)デザインの仕事につくまでの道のり

太田さんの少年時代のことを教えてください。やっぱり模型(もけい)づくりが好きだったんですか?

もちろんプラモデルはよくつくったし、こわれた家電を分解(ぶんかい)して、もう一度組み立て直したりしてました。料理も好きで家庭科が得意でしたね。
手先が器用で、コツコツ細かい作業をするのが好きだったので、小学生のころから、将来(しょうらい)は何かものをつくる仕事につきたいなと思っていました。

 
幼稚園(ようちえん)の入園式で。「それほど活発ではなかったけれど、いろんなことに興味がありすぎて、おちつきのない子どもでした(笑)」
幼稚園(ようちえん)の入園式で。「それほど活発ではなかったけれど、いろんなことに興味がありすぎて、おちつきのない子どもでした(笑)」

中学生のころ、建築(けんちく)に興味(きょうみ)をもち始め、高校生になると、橋のような大きなものをつくるのもいいなと思うようになりました。
ものをつくりたいという気持ちは変わりませんが、その対象がどんどん大きくなっていったんですね。料理か、建築か、橋か…。進路を決めるとき、この3つでなやみました。

決め手になったのは、仕事にするなら「自分一人ではつくれないもの」をつくってみたい、ということでした。
料理はしゅみでもできますし、家一けんくらいなら、自分で何とかできそうです。
でも橋は会社に入らないとつくれませんからね。橋をつくるには「土木(どぼく)」の知識(ちしき)が必要だということで、大学は土木工学科に進んだんです。

 

そのときはもう「建設コンサルタント」とか、「景観デザイン」という仕事のことは知っていましたか?

 

いいえ、まったく知りませんでした。

大学生のとき。自作のジオラマを持って。 大学生のとき。自作のジオラマを持って。

大学に入ってから本格的(ほんかくてき)に土木の勉強を始めて、だんだんいろいろなことがわかってきたという感じです。
土木ではダムや鉄道、港など、橋よりももっと巨大なものもつくります。そして何をつくるにしても絶対に必要なのが、構造計算(こうぞうけいさん)などめんどうな計算の数々。そういう勉強をしながら、つくづく「計算ってきらいだな」と思いました(笑)。やるなら設計(せっけい)とか、ものの形を考える仕事がしたい、やっぱり橋をつくるのがいちばんおもしろそう、というように、土木のことがわかるにつれて、自分のやりたいことがしぼられていったわけです。

大学では「景観工学(けいかんこうがく)」という景観について学ぶ授業(じゅぎょう)がありました。大学3年生のときには、模型やジオラマをつくる授業もあって、これがすごくおもしろかった。
しかもその授業の講師(こうし)をしていたのが、今の会社の人だったんです。

 

このとき初めて「建設コンサルタント」という職業(しょくぎょう)を知り、その中にはこういう「景観を考える仕事」があることも知りました。

わたしはこの模型づくりがけっこう上手だったようです。講師の先生、つまり、のちにわたしの上司(じょうし)になる人から、「模型をつくるのがうまいじゃないか。うちの会社でバイトするか?」と声をかけられました。だから「あ、いいですよ」って。今から考えると、失礼な学生ですよね。20歳ぐらい年上の人に対して「あ、いいですよ」って(笑)。
それから、会社でひたすら模型をつくるバイトをして、すごく楽しかったです。そして大学院卒業後、そのままこの会社に就職(しゅうしょく)することになりました。

わたしはいったん仕事を決めたら、いやでも30年くらいはその仕事を続けるものだと思っていました。ですから本当にこの先、30年間も橋をつくり続けることができるかどうか、少し不安だったんです。そこで入社する前に、10週間ほどヨーロッパをあちこち旅しました。川ぞいを8時間ぐらいずーっと歩いて、橋や建物(たてもの)をひたすら見て回ったんですよ。今のアイデアのインプット方法と同じですね。見知らぬ外国でそういうことをくり返しているうちに、仕事への覚悟(かくご)が決まっていきました。

入社して最初に配属(はいぞく)されたのは、構造などの計算をする部署(ぶしょ)でした。計算はきらいなのに(笑)。でも、こういう計算は土木の基本ですから、ここをしっかりわかっていないと、橋の設計はできません。いわば「修行」期間です。5年間ぐらいは毎日計算ばかりしていました。それから今の景観デザイン室に配属されたんです。

そうか、会社に入っても、すぐに好きな仕事につけるわけじゃないんだね。5年間も苦手な計算の仕事を続けたなんて、すごいなあ。
太田さんのような仕事をするにはどうすればいいか、次のページで聞いてみよう!

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