はじめに
アフターコロナ社会の新たな社会環境の中、「継続すべき業務を担う業界」との認識を新たにし、改正労働基準法等法令遵守による働き方改革の一層の推進、改正品確法を踏まえた更なる品質確保や生産性向上、頻発する災害での緊急対応など、受注者の責務をより一層適切に果たすよう積極的に取り組む。
また、安全で安心、活力ある社会、持続可能な社会の基盤となる社会資本の重要性やその整備の推進に貢献している建設コンサルタントの役割を国民に理解されるよう広報活動に積極的に取り組み、さらには激甚化・頻発化する災害や今後予想される大規模災害等から国民を守り美しく豊かな国土となるよう、効率的・着実な社会資本の整備・保全のため、より高い技術力を持った知的集団として貢献できるよう、一層技術力の研鑽や向上に継続して取り組む。
このように、多様化・複雑化する社会課題に対して、安全・安心、活力ある社会の構築と持続可能で夢のある未来に貢献し、魅力と働きがいのある業界として発展するよう、新たな中期行動計画(2023~2026)を積極的かつ強力に推進する。
Ⅰ.一般会計
1.魅力ある建設コンサルタントに向けた環境整備とそのための活動基盤の充実
(1)魅力ある職場づくり
より一層魅力ある職場づくりを推進し、今後も建設コンサルタントがその役割を十分に果たすとともに、社会資本の整備・保全を計画的かつ着実に推進するため、建設コンサルタントが抱える諸課題の実態調査やその改善策、DXの一層の推進等受発注者間の業務改善策の提案など、発注機関等との意見交換会を継続して開催するなど積極的に活動する。併せて、国土交通省等に設置されている委員会等に対応した様々な課題について検討を行う。
(2)働き方改革
改正労働基準法を踏まえ働き方改革をなお一層推進するため、引き続き働き方改革セミナーを開催するとともに、職場環境改善に向け引き続き一斉ノー残業デーの実施やウィークリースタンスを含めた様々な施策の実態調査を継続して実施する。
また、平成27 年度に若手を中心として発足した「業界展望を考える若手技術者の会」の活動を継続する。
(3)建設コンサルタントの地位向上
建設コンサルタント登録制度が地方公共団体においてより活用される制度となるよう具体的な活用促進策の検討を行う。
また、建設コンサルタントの地位向上のため、建設コンサルタント業務の法制 化や技術者の資格制度のあり方について検討する。
(4)地域コンサルタントの健全な発展
地域コンサルタントの健全な発展のため、地域コンサルタントの経営実態の把握や、意欲ある地域コンサルタントが選定される入札契約制度のあり方等について、引き続き検討を行う。
(5)経営改善
会員の経営改善等に資すべく、会員の経営・財務状況の分析を行い、経営分析説明会を開催するとともに、外部講師を招いた契約のあり方に関する講習会を引き続き開催する。
また、建設コンサルタント賠償保険制度について、民法改正を踏まえた制度内容の検討や会員のニーズへの対応、業務領域の拡大を踏まえた保険制度の必要性の検討や保険の加入の義務化など、適正な責任担保制度の確立に向けて検討を行うとともに、発注機関と公正な契約を締結するため損害賠償責任のあり方について検討を行い、委託契約約款の改正を含め提案を行う。
(6)次期品確法改正に向けた対応
次期品確法の改正に向け、協会としての課題と対応について検討する。
2.品質の確保・向上
(1)品質確保・向上の施策
令和4年11月発行の「品質向上推進ガイドライン改訂版」について周知活動行うとともに、品質確保・向上に係る様々な施策について有効性や課題を整理し改善策を検討する。
また、収集したエラー事例やアンケート調査結果に基づき効果的な品質確保策の基本方針を検討する。
(2)品質確保・向上の活動促進
建設コンサルタントの技術力向上と成果品の品質の確保・向上を目的とした品質セミナーのビデオ配信、マネジメントシステムの効果的な運用事例の紹介やその他のマネジメントシステムの普及を目的として、アンケート調査、調査研究等のほか、最新情報や業界の動向、今後の方向性などの情報提供を中心としたマネジメントセミナーを全支部向けに継続して開催するとともに、支部における品質向上に関する活動促進のため支部との連携を強化する。
3.技術の向上と技術力による選定の促進
(1)維持管理・更新に関する技術力向上
社会資本の本格的な維持管理・更新時代を迎え、戦略的・計画的な事業推進が求められており、点検・診断から補修・補強設計等に関する業務体系、技術基準・要領や報酬・積算体系および建設コンサルタントの役割など継続して検討し、発注機関や関係機関に協会の提案事項を発信するとともに、会員へ技術情報を提供していく。さらに、RCCMの点検・診断に係わる資格制度等の地方公共団体での活用促進を図る。
(2)事業領域の拡大と契約方式の改善
官民連携(PPP)、民間資金の活用(PFI)、PM/CM および土木インフラを対象としたアセットマネジメントなど建設生産・管理システムの新たな業務領域の拡大や契約方式の改善に向けて、建設コンサルタントが果たすべき役割や必要な取り組みに対する調査・研究を行うとともに、会員および地方公共団体等への啓発活動を支部と連携して行う。
(3)技術力に基づく選定
技術力に基づく選定をなお一層促進させるため、国土交通省および地方公共団体における入札・契約制度に関する実態調査や動向調査等を継続して実施するともに、改正品確法の運用指針に基づき国が公表する調査結果等も踏まえ、地方公共団体へのプロポーザル方式や総合評価落札方式の普及活動を継続して行う。
(4)技術的課題への対応
建設コンサルタント分野の技術的な課題や懸案事項について、方針・方向性の検討や技術情報の提供を行う。また、必要に応じて技術相談窓口の運営を行い、新技術や技術基準等に関するセミナー、講習会、勉強会等を本部・支部で引き続き開催する。さらに、各種技術基準類等の見直しについて検討し、必要な対応を行う。
(5)海外事業への参入支援
海外事業への参入を支援するためのセミナー等を継続して開催する。
(6)建設生産・管理システムの効率化
建設生産・管理システムの効率化を図るため、調査・設計~施工~維持管理を通じた情報、ノウハウのプラットフォーム化やフロントローディングの考え方に基づく全体最適設計の実現など、i-Construction(BIM/CIM 導入など)、DX などを積極的に推進する。
(7)業務研究発表会
業務における優れた成果や自主研究開発成果の発表を通じて互いの技術の研鑽を目的とした業務研究発表会を引き続き開催する。
(8)RCCM資格制度
RCCM 資格制度の重要性を踏まえ、コロナ禍等においても万全の感染防止対策の下、令和3年度から導入したCBT試験(紙を使わずコンピューターで受験する方式)を継続して実施するとともに、Web 化した更新登録の円滑な運営や自主学習環境の改善等RCCM 資格制度全般の改善を進める。
(9)CPD制度
CPD制度を適正に運用するためのCPD監査を実施するとともに、会員のCPD取得支援を目的とした当協会Web講習システムによるセミナー録画配信を継続して実施する。
4.広報活動の強化と社会貢献活動の推進
(1)建設産業全体のイメージアップ
建設コンサルタントを含めた建設産業界全体のイメージアップを図り、建設コンサルタントの役割や活動が一般国民に理解・評価されるよう、本部と支部との連携や他団体との連携を一層深めるとともに、広報活動の方向性の検討や情報収集、情報共有、それらを踏まえた情報発信を積極的に行う。
(2)魅力ある建設コンサルタントの広報
魅力ある建設コンサルタントの広報活動の推進のため、学生懸賞論文、建コンフォト大賞等の公募と表彰や支部における講演会、セミナー、出前講座などの活動を継続して行う。
(3)協会活動の広報
協会活動、委員会活動の広報と他団体や海外の情報を含めた様々な情報提供のため、ホームページの充実を図るとともに、会誌、年次報告書や建設コンサルタント白書等を発行する。
また、各委員会の活動成果を必要に応じてとりまとめ公表する。
(4)委員・講師の派遣
社会資本整備の必要性や建設コンサルタントの理解促進のため、発注機関等への委員派遣や全国の学校への講師派遣等を継続して行う。
また、支部を中心として、まちづくり等へのボランティア活動に積極的に参画する。
(5)災害対応のための環境整備
被災地域に対する迅速かつ適切な災害対応と改正労働基準法遵守との両立や災害申請作業の合理化・適切化など、受発注者協働による災害対応のための環境整備に向け積極的に活動するとともに、支部において締結される行政機関等との災害協定や広域災害時の支援活動等に関する課題について、その対応策などの協議を継続して検討する。
また、災害時対応演習を今年度も継続して実施する。
5.倫理の保持
(1)倫理関連規程の会員周知
「令和元年5月に改定した「倫理綱領」との整合性を図ったうえで、令和4年に改定した「建設コンサルタントの倫理」及び「建設コンサルタントにおける行動計画」等について、会員への周知を図る。
(2)倫理の啓発
職業倫理・コンプライアンスに関する啓発のため、コンプライアンス講習会の実施、独禁法等の動向調査や行動計画実施状況調査等を実施する。
6.社会資本整備のあり方の提言
(1)建設コンサルタントの新たな役割
SDGs(持続可能な開発目標)を念頭にDX の推進、カーボンニュートラル等の実現に向けた持続可能な社会づくりや、建設コンサルタントの新たな事業展開、今後の社会資本整備・管理、地域マネジメントのあり方など、それらを支える技術者の総合的な技術力の確保育成方策やその能力の評価方策などを含め、今後建設コンサルタントが果たすべき新たな役割等の提案に向け検討する。
(2)インフラストラクチャー研究所の活動
インフラストラクチャー研究所を中心として、社会資本整備の必要性と建設コンサルタントの役割について幅広く国民の理解を得るための広報活動(インフラ整備70年講演会、インフラ研通信等)や、我が国における建設生産・管理システムの向上に関する活動(建設コンサルタント業務の契約のあり方に関する講習等)、建設コンサルタント技術者及び業界に対する技術情報の提供ならびに資質向上のための活動(道路橋技術相談窓口)とともに、建設コンサルタントが携わる可能性のある新たな業務の発掘に向けた研究等を行い、その成果を建設コンサルタント業界に広報する。
(3)関係団体との連携
関連団体との連携を強化するため、公益社団法人日本建築家協会との社会資本整備の進め方や新たな事業スキームの検討を始めとして、関連団体の講演会・講習会への参加や情報交換を、支部を含め積極的に行う。
7.協会組織の充実と活動の強化
(1)協会創立60周年記念事業
協会創立60周年の記念事業の一環として、記念式典、記念表彰、記念誌の発行及び記念講演会を開催する。
(2)中期行動計画
新ビジョンに基づく中期行動計画(2023~2026)の推進を図るとともに、関連委員会および支部の行動成果をとりまとめる。
(3)本部・支部意見交換会
協会活動の充実と本部・支部活動の一層の連携を図るため、本部・支部意見交換会を引き続き開催する。
(4)協会事務運営の合理化
協会事務運営の合理化、効率化に引き続き取り組むとともに、会員ニーズへの対応のための会員ホームページの充実及び協会内ネットワークのセキュリティ強化等に向けた取り組みを推進する。
8.支部活動の強化
各支部において、インフラ整備構想等の提言活動などに積極的に取り組むとともに、その他、地域の状況に対応した各支部における様々な事業を積極的に展開する。